釜石鉱山鉄道

釜石鉱山鉄道：複雑な歴史を辿った鉱山鉄道

岩手県釜石市に位置する釜石鉱山と釜石製鉄所を結ぶために建設された釜石鉱山鉄道は、日本の鉄道史において特異な存在です。明治13年、工部省釜石鉄道として開業した同鉄道は、わずか3年で廃止されるという波乱の幕開けを迎えました。その歴史は、開業から廃止、そして再建と、幾度もの変化を遂げています。

開業から廃止、そして再建へ

明治13年2月17日、釜石桟橋から大橋間を結ぶ鉱山専用鉄道として、工部省釜石鉄道が試運転を開始しました。本線は当初、大橋まで到達しておらず、支線の全線竣工も翌年の9月までずれ込みました。同年9月7日には製鉄所と鉄道の仮開業式典が行われましたが、これは日本で3番目に開業した鉄道として歴史に刻まれました。しかし、軌間は838mmという特殊な規格で、機関車は英国から輸入されたサドルタンク式3両でした。

開業からわずか3年後の明治15年、製鉄所の炭焼竈の大半が火災により焼失し、製鉄所は操業を停止しました。これにより、釜石鉄道は遊休施設となり、一般開放されて旅客運輸を開始します。しかし、そのわずか数ヶ月後には、列車同士の衝突事故が発生し、死傷者を出しました。そして、明治15年12月、官営製鉄所の操業停止と鉱山閉山により、釜石鉄道は全廃されました。木炭不足とコークス使用の目処が立たなかったことが、廃止の直接的な原因とされています。

明治17年、政府御用商人の田中長兵衛とその娘婿である横山久太郎が鉱山再興に着手。明治20年には日本国内初となる高炉による連続出銑に成功し、釜石鉱山田中製鉄所が設立されました。そして、明治27年5月23日に特許を取得、同年11月28日に製鉄所と大橋の鉱山を結ぶ釜石鉱山馬車鉄道が開業しました。軌間は762mmでした。

蒸気機関車への転換と路線の延伸

明治44年11月3日、馬車鉄道は蒸気運転に切り替えられ、鈴子（後の釜石）から大橋間15.52kmを結ぶ路線となりました。これは二代目田中長兵衛の個人経営による鉱山鉄道でした。大正3年には、釜石電気により大橋から仙人峠間に貨物用の索道が開通。また、岩手軽便鉄道（後の釜石西線→釜石線）の遠野駅～仙人峠駅間も開通しました。大正4年には岩手軽便鉄道の花巻駅～仙人峠駅間が全通、鉄道と索道による花巻～釜石間の連絡ルートが完成しました。このルートは、現在の釜石線の原型といえます。

その後、釜石鉱山鉄道は幾度と経営母体が変化し、大正6年には田中鉱山、大正13年には三井財閥傘下の釜石鉱山へと譲渡されました。昭和9年には日本製鐵の経営となり、昭和14年には鉄道省山田線の盛岡駅～釜石駅間が開通、省線との連絡運輸が開始されました。

旅客輸送の廃止と最終的な廃線

昭和15年、釜石鉱山鉄道は日鉄鉱業の経営に移りました。そして、昭和19年10月11日、一般旅客・貨物営業は廃止され専用鉄道に転換されました。しかし、昭和20年には釜石東線の旅客営業を開始。昭和25年10月10日には釜石西線と釜石東線が統合され、花巻駅～釜石駅間の釜石線が全通しました。これに伴い、日鉄鉱業線での通勤旅客輸送も廃止されました。最終的に、昭和40年4月1日、市街地を鉄道が通過していたことによる道路拡張の支障などを理由に、全線廃止となりました。

釜石鉱山鉄道は、その歴史の中で、鉱石輸送の役割だけでなく、旅客輸送も担い、地域の交通インフラとして貢献しました。しかし、時代の変化と共に、役割を終え、その歴史に幕を閉じました。その複雑で興味深い歴史は、日本の近代化と産業発展の一端を垣間見せてくれます。

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