釣瓶落峠

釣瓶落峠（つるべおとしとうげ）

概要

釣瓶落峠は、青森県中津軽郡西目屋村と秋田県山本郡藤里町に位置する峠です。世界遺産である白神山地の東側に位置し、豊かな自然に囲まれています。峠のすぐ西側には、青森県道・秋田県道317号西目屋二ツ井線が通り、県境区間には釣瓶トンネル（標高710m）が設けられています。

かつて、トンネルができる前は、牛馬や荷車が通行できないほどの難所でした。人々は鎖を使って急な崖を200mも上り下りする必要があり、その様子が井戸の釣瓶が落ちる様子に似ていたことから、「釣瓶落峠」と名付けられました。峠には、訪れた人が記帳できるノートが置かれていました。

現在では道路とトンネルが整備され、峠からの眺めは一変しました。特に桧原沢の紅葉や、ヒバ（サワラ）・天然秋田杉といった樹木が美しい景観を作り出しており、多くの人々を魅了しています。峠周辺は、白神山地から八甲田山、十和田湖周辺へと続く「白神八甲田緑の回廊」の一部となっており、野生動物の移動経路としても重要な役割を果たしています。

秋田県側は峠まで全面舗装されていますが、青森県側は峠から5km程度が舗装されています。過去には土砂崩れや豪雨の影響で通行止めになることもありましたが、現在は復旧しています。峠の青森県側は比較的緩やかなブナ林が広がり、渓流が流れる白神山地特有の地形が見られます。一方、秋田県側は崖が多く、ブナやヒバ、天然秋田杉などが生い茂る荒々しい地形が特徴的です。

融雪や降雨時には、峠の周辺に滝が現れることがあります。また、春には新緑に包まれ、ウラジロヨウラク、ムラサキヤシオツツジ、タムシバなどの美しい花々が咲き誇ります。

歴史

釣瓶落峠は、かつて津軽藩と久保田藩を結ぶ重要な道の一つでした。主に尾太鉱山や太良鉱山への物資輸送のために、人々が往来していました。

戊辰戦争の際には、大館城攻城戦で津軽藩は久保田藩を支援し、南部藩に対抗しましたが、大館城は落城してしまいました。その後、久保田藩は、釣瓶落峠の川下にあるきみまち阪に防衛拠点を再設定し、津軽藩の裏切りを警戒して、釣瓶落峠にマタギで構成された鉄砲隊を配置しました。この際、峠では多くの松明を焚き、見張り兵を多数配置したように見せかける偽装が行われたという逸話も残っています。

参考文献

• - 『白神の山旅』、西口正司、2008年

関連項目

• - 日本の峠一覧
• - 西目屋村
• - 藤里町

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