きみまち阪

きみまち阪（きみまちざか）

秋田県能代市二ツ井町に位置するきみまち阪は、県立自然公園として、その美しい景観で人々を魅了しています。春には桜、初夏にはツツジ、秋には紅葉と、四季折々の自然美が楽しめる秋田県有数の名所であり、県内外から多くの観光客が訪れます。特にデートスポットとしても人気を集めています。

地理

かつて、きみまち阪は米代川の川岸に迫る険しい山であり、「郭公坂」「馬上坂」「畜生坂」などと呼ばれ、羽州街道の最大の難所でした。約1kmの距離ながら、その険しさから1里（約4km）に匹敵すると言われ、「一里の渡し」と呼ばれる船渡しが利用されていました。船渡しが利用できない場合は、徒歩で藤琴川を渡り、絶壁をよじ登る必要がありました。弘前藩主の津軽氏も参勤交代の際に遠回りの間道を利用したと伝えられています。

現在、きみまち阪周辺には断崖絶壁の屏風岩が残り、往時の険しさを偲ばせます。公園として整備された内部は緑豊かな樹木に覆われていますが、大正時代の写真には白い岩が点在する荒々しい風景が記録されています。頂上付近には駐車場やキャンプ場があり、二ツ井テレビ・FM中継局からは二ツ井町や藤里町、日本海を一望できます。

歴史

「きみまち阪」という名称は明治15年に命名されました。明治天皇が東北巡幸の際、皇后が天皇の到着を待ち、その思いを歌に託したことが由来とされています。それ以前は、難所として知られていましたが、明治天皇の巡幸を機に整備され、人々に親しまれる場所へと変わりました。

1774年には、きみまち阪と藤琴川の間に加護山製錬所が作られ、阿仁鉱山などの鉱石が製錬されました。平賀源内も技術指導のために招かれています。1802年には、菅江真澄がこの地を訪れ、七座山を含めた俯瞰図を残しました。

戊辰戦争の際には、久保田藩が防御地点として利用し、官軍の援軍を待ちました。1869年には、榎本武揚が川船でこの地区を輸送され、その風景を漢詩に詠んでいます。1878年には、イザベラ・バードが増水する米代川を遡ろうとし、危うく遭難しかけるも、その美しい風景を記録しています。

1881年の明治天皇の東北巡幸に際し、坂道が整備され、藤琴川に橋が架けられました。1889年にはトンネルが完成し、1901年には奥羽本線が開通。1924年にはきみまち阪公園が開園し、1964年には県立自然公園に指定されました。

1990年には手づくり郷土賞を受賞。1999年にはNHKの番組で、この地名に由来する歌が作られ、全国に放送されました。

きみまち阪県立自然公園

1964年に指定された県立自然公園は、きみまち阪を中心とする599haの広大なエリアを誇ります。自然豊かな景観の中で、歴史と文化に触れることができる魅力的なスポットです。

高岩神社と恋文神社

きみまち阪の山頂部からは、平安時代に円仁が開いたとされる高岩神社への山道が続いています。神社周辺には奇岩や巨石が鎮座し、古くは一大霊場として栄えました。近年では、地元の町おこし企画「恋文コンテスト」と連動して「恋文神社」が建てられ、新たな観光スポットとなっています。

きみまち阪は、豊かな自然、歴史、文化が織りなす、訪れる人々を魅了する場所です。

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