鉄川与助

鉄川与助：長崎の教会建築を彩った巨匠

鉄川与助（1879年1月13日 - 1976年7月5日）は、長崎県南松浦郡魚目村（現新上五島町）出身の、大工棟梁であり建築家です。彼は、長崎県を中心に数多くのカトリック教会堂建築を手がけ、その功績から「教会建築の父」とも呼ばれています。

生い立ちと初期の活動

1879年、鉄川与助は五島列島の中通島で、大工の棟梁であった鉄川与四郎の長男として誕生しました。幼少期に魚目村へ移り住み、有川高等小学校を卒業後、家業を手伝います。20歳になった1899年、魚目村に曽根天主堂が建設された際、野原棟梁と出会います。野原棟梁はフランス人宣教師A・ペール神父の指導の下で、当時まだ少なかった天主堂建築を手がけていました。この出会いが与助にとって初の西洋建築との出会いとなり、以後、野原棟梁の下で修行を積むことになります。

当時、五島列島では信者たちが天主堂建設を強く望んでおり、与助は天主堂建築に情熱を傾けていくことになります。ペール神父からはリブ・ヴォールト天井や幾何学について学び、野原棟梁の下で天主堂建築の技術を磨きました。1906年、27歳で家業を継承し、鉄川組を編成します。30代半ばには、大浦天主堂に隣接する大司教館の建築に携わり、マルク・マリー・ド・ロ神父と出会います。この出会いもまた、与助の建築観に大きな影響を与えました。神父から教会建築に関する様々な知識を教えられ、素材選びや建築に対する姿勢に感銘を受けた与助は、その後の仕事に大きく活かすことになります。

教会建築家としての活躍

鉄川与助は、その生涯で数多くのカトリック教会堂を建設しました。彼の建築は、西洋の様式を取り入れつつも、日本の風土や文化に合った独自のスタイルを確立しており、その建築は地域の人々から深く愛されています。

1959年には黄綬褒章、1967年には勲五等瑞宝章を受章するなど、その功績は広く認められています。多くの教会堂建築に携わった一方で、彼自身は生涯仏教徒でした。仏教寺院の建築に関わったのは生涯で3軒にとどまっています。

晩年と遺産

晩年は横浜市で過ごし、97歳で亡くなるまで元気だったと伝えられています。彼の孫は、与助が亡くなる数週間前まで元気で、亡くなる際には「仏様が見える」と話したと証言しています。

鉄川与助の遺した資料は、五男の鉄川喜一郎によって著述家の喜田信代に貸与され、それを基に喜田が2017年に『天主堂建築のパイオニア・鉄川與助―長崎の異才なる大工棟梁の偉業』を出版しました。これにより、鉄川与助の業績は改めて広く知られることとなりました。

鉄川与助が設計・施工に携わった主な教会堂

曽根教会
江上教会
大浦天主堂
堂崎天主堂

鉄川与助が設計・施工に携わった主な寺院

浄福寺（長崎県南松浦郡新上五島町、1921年、浄土宗）
元海寺（長崎県南松浦郡新上五島町、1924年、浄土真宗本願寺派）
* 得雄寺（長崎県南松浦郡新上五島町、1947年-1950年、浄土真宗本願寺派）


鉄川与助は、長崎の教会建築史にその名を深く刻んだ偉大な建築家です。彼の残した建築物は、今もなお多くの人々に感動と安らぎを与えています。

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