鉄腕アトム (実写版)

鉄腕アトム（実写版）について

1959年3月7日から1960年5月28日まで、毎日放送とフジテレビ系列で放送された、手塚治虫原作の漫画『鉄腕アトム』を実写化したテレビドラマです。全65話、白黒作品で、ロッテの一社提供でした。

概要

この実写版『鉄腕アトム』は、戦前から円谷英二特技監督と組んでいた松崎啓次が設立した「松崎プロダクション」と毎日放送が共同で制作しました。当初、特撮は円谷英二が担当する予定でしたが、最終的には円谷は監修に回り、円谷特技研究所のスタッフがミニチュア撮影などを担当しました。

アトムの飛行シーンは、人形によるミニチュア撮影と、瀬川雅人（アトム役）と背景の合成撮影を組み合わせて表現されました。また、足からのジェット噴射の描写は、各エピソードによって煙や火花など、統一されていませんでした。

オープニング映像には、アニメーションで「ロボットの発達史」と「ロボット法」が描かれており、これはアニメ版『鉄腕アトム』よりも早く、初のアニメ化となりました。

ストーリーは原作のSF要素を薄め、ギャング団との戦いを軸にした、当時の探偵ヒーローものに近い内容となっています。原作では21世紀が舞台ですが、実写版では1959年、つまり放送年と同じ時代設定になっています。

「松崎プロ」は、1960年3月から『少年』で「アトム友の会」の会員を募集し、「瀬川を囲む会」の開催を予定していましたが、番組の終了とともに中止となりました。

評価・影響

1年間にわたる人気作品でしたが、手塚治虫は「原作のイメージとかけ離れている」として、実写化に不満を抱きました。この経験が、数年後のアニメ版『鉄腕アトム』制作の原動力になったと言われています。また、手塚は実写版『マグマ大使』の成功を受けて、1972年に自身による実写版『アトム』の制作を検討したこともあります。

提供スポンサーのロッテは、アニメ版『鉄腕アトム』のスポンサーになることを目指しましたが、実現しませんでした。ロッテが手塚治虫原作のアニメのスポンサーになるのは、1965年の『W3』まで待つことになりました。

キャラクター

アトムを演じたのは、当時子役だった瀬川雅人です。アトムは天馬博士によって作られ、御茶の水博士に育てられています。人間の10倍の聴力や10万馬力のパワー、ジェット飛行能力を持ち、指先から火花を出して扉を焼き切ることもできました。アトムが車を運転するシーンでは、瀬川雅人自身が運転しています。

衣装

アトムの頭部は、硬質素材のヘルメット状のカツラで表現されました。第1部では黒く耳が隠れたタイプでしたが、第2部では白っぽく耳が露出したタイプに変わり、その後、黒く成形が整ったものに変化しました。

胴体部分は、第1部ではプラスチック製のプロテクターが使用され、原作に近いイメージでした。しかし、第2部からは黒いレザー風の上着にタイツ、ブーツというスタイルになり、原作とは異なる印象になりました。連載誌『少年』では、この新衣装が好評であると報じられました。

火星探検編では、アトムは軍服姿を披露し、『少年』誌で紹介されました。

衣装変更の理由として、着ぐるみの動きにくさや、アトムにロボットのイメージを求める必要がなくなったことが推測されています。

キャスト

アトム：瀬川雅人
御茶の水博士：田中明夫（第一部）、森野五郎（第二部以降）
御茶の水夫人：田上嘉子（第一部）
アトムのパパ：清水金一（第五部）
アトムのママ：若原春江（第五部）
田鷲警部：寄山弘（第一部）、北川国彦（第二部、第三部）、倉田地三（第五部）
伴俊作：富永一矢（第一部）
中村課長：中江竜介（第一部）
隼探偵：根岸弘子（第三部）
四部垣：根岸一正（第二部、第三部、第五部）
健二：米田一
タマ夫：中川三男（第二部、第三部、第五部）

スタッフ

製作：松崎啓次、米山彊
脚本：渋谷五十八、岩田重利、コオロギハルヲ、宮川一郎、坂巻昇、志波裕之
音楽：小川寛興、益田克幸
撮影：瀬川浩、吉田豊
特撮：加藤守男、山根茂幹、山崎明
監督：吉川博、志波西果、大橋秀夫、難波敏夫

主題歌

『鉄腕アトムの歌』
作詞：青木義久
作曲：益田克幸

歌唱者は、各部で異なっています。

放送リスト

全5部構成で、各13話ずつとなっています。一部のエピソードはフィルムが現存しないため、欠番となっています。

第1部 ZZZ団の巻

世界の要人を狂わせる「ZZZ団」とアトムの戦いを描きます。

第2部 メキシコへ行くの巻

アトムがメキシコで、ピラミッド調査団とサパタ夫人の対立に巻き込まれます。

第3部 フランケンとアトムの巻

バラン団が日本を征服しようと企み、アトムは怪力ロボット・フランケンと戦います。

第4部 火星探検の巻（火星にとぶ）

アトムが火星で宇宙人と戦う物語です。軍服姿のアトムが登場します。

第5部 気体人間の巻

アトムの両親が登場し、アトムに気体人間が乗り移るなど、奇妙な事件が起こります。

ネット局

四大都市圏では同時ネットでしたが、地方では時差ネットでした。

再放送

アニメ版『鉄腕アトム』が放送されるまで、何度も再放送されました。

映像ソフト化

過去にビデオやDVDが発売されています。2016年にはHDリマスター版DVD-BOXが発売されました。


実写版『鉄腕アトム』は、当時の特撮技術や演出、子供たちの熱狂ぶりなど、昭和のテレビ史を語る上で欠かせない作品です。

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