銀河 (列車)

寝台急行「銀河」：東京と大阪を結んだ夜行列車の軌跡

寝台急行「銀河」は、日本国有鉄道（国鉄）時代から、分割民営化後のJR各社によって、東海道本線の東京駅と大阪駅の間で運行されていた夜行急行列車です。その名の通り、天の川を意味する「銀河」に由来し、夜空を旅するロマンを感じさせる列車でした。ここでは、「銀河」の歴史、運行状況、使用車両、そして東海道本線を彩った他の夜行列車についても詳しく解説します。

概要

「銀河」の歴史は1949年9月に、東京駅と神戸駅を結ぶ夜行急行列車15・16列車に「銀河」の愛称が与えられたことから始まります。運行当初は、一等車と二等車のみで構成された豪華な編成でしたが、戦後の混乱期には利用客が伸び悩み、三等車の連結やテールマークの取り外しが行われました。1976年頃には、運行距離から特急列車化も検討されましたが、所要時間の差が小さく、繁忙期には座席車中心の臨時列車が運行されていたため、急行列車として存置されました。しかし、2000年代に入ると車両の老朽化や利用客の減少が深刻化し、2008年3月のダイヤ改正でその歴史に幕を閉じました。廃止の背景には、新幹線や航空機、高速バスの発達、そして格安宿泊施設の増加が挙げられます。

運行概況

「銀河」は、東京・大阪ともに朝7時前後に到着するダイヤで、朝一番から活動できる利便性がありました。到着時刻の調整のため、途中駅で停車時間を長めに取るなどの工夫もされていました。列車番号は下りが101列車、上りが102列車でした。
運行開始当初は1往復でしたが、1968年10月に寝台急行「明星」が統合され、2往復になりました。また、急行「なにわ」の廃止に伴い、全車座席車の季節列車も1往復設定されましたが、1975年に特急列車に変更され、定期列車は1往復の運転が継続されました。1998年7月からは、臨時の「銀河」のダイヤを利用して、285系電車「サンライズエクスプレス」による寝台特急「サンライズゆめ」が運行を開始し、晩年は「サンライズゆめ」に変更されました。

停車駅

東京駅 - 品川駅 - 横浜駅 - 大船駅 - 小田原駅 - 熱海駅 - （静岡駅） - 米原駅 - 大津駅 - 京都駅 - 新大阪駅 - 大阪駅
（　）は下り列車のみ停車。〔　〕は上り列車のみ停車。

使用車両・編成

機関車は、JR東日本の田端運転所所属のEF65形電気機関車が牽引を担当しました。特急ではないため、ヘッドマークは装着されませんでした。客車はJR西日本の宮原総合運転所に所属する24系客車が使用され、全車寝台車で構成されました。A寝台とB寝台が連結され、個室や座席車は連結されませんでした。電源車カニ24は、トワイライトエクスプレス色の車両が連結されることもありました。廃止時に使用された客車は、タイ国有鉄道に譲渡され、今もなお活用されています。

過去の使用車両

運行当初は、旧型客車が使用されていましたが、1970年代には特急用車両であったスハ44形客車が座席指定車として使用されるなど、他の夜行急行列車とは異なる編成が見られました。1976年には20系客車が導入され、特急用車両の急行列車への転用という初の事例となりました。その後、14系客車を経て、最終的には24系客車が使用されました。一時、581・583系電車への置き換えも検討されましたが、最終的には見送られました。

担当乗務員区所

運転士は、各社線内をそれぞれ担当しました。車掌は、全区間をJR西日本大阪車掌区が担当していました。

利用状況

「銀河」は、新幹線や航空機の最終便よりも遅く出発し、翌朝の始発列車よりも早く到着できるため、移動手段の空白を埋める存在として重宝されました。ビジネス客を中心に利用されていましたが、2000年代に入ると、新幹線や高速バスの普及、ホテルの価格破壊などの影響を受け、利用客が減少しました。晩年は減車を余儀なくされ、季節列車への格下げや廃止説も浮上し、2008年に廃止されました。

東京対大阪夜行急行列車群

東海道本線では、「銀河」以外にも様々な夜行急行列車が運行されていました。以下にその代表的な列車を紹介します。

明星

1948年7月に運行を開始した急行列車で、1968年10月に「銀河」に統合されました。

彗星

1949年9月から1964年9月まで運行された夜行急行列車で、ビュフェ式食堂車「サロンカー」が連結されていました。

月光

1953年11月から1965年9月まで運行された夜行急行列車で、座席車と寝台車が連結されていました。

あかつき

1958年10月から1964年9月まで断続的に運行された急行列車で、座席車と寝台車が連結されていました。

金星

1961年3月から1965年10月まで運行された夜行急行列車で、当初は電車で運転され、後に客車化されました。

いこま・よど・六甲

1961年10月から1968年10月まで運行された急行列車で、大阪府周辺の地名に由来しています。昼行と夜行があり、座席車で運行されていました。

すばる

1963年10月から1964年9月まで運行された夜行急行列車で、東海道新幹線の開業によって短命に終わりました。

沿革

「銀河」を含む東海道本線の夜行急行列車の変遷を時系列でまとめました。

- 1947年：東京駅 - 大阪駅間で急行103・104列車が運転開始。
- 1949年：「銀河」の愛称が与えられ、東京駅 - 大阪駅間の急行は3往復に。
- 1950年：「明星」「彗星」と命名。
- 1953年：「月光」運転開始。
- 1956年：「銀河」に三等寝台車連結。
- 1958年：「あかつき」運転開始。
- 1961年：「金星」運転開始。「銀河」寝台列車化。
- 1962年：「あかつき」復活。「彗星」にビュフェ車連結。
- 1964年：「彗星」「あかつき」「せっつ」「すばる」が廃止。
- 1965年：「金星」「よど」「六甲」が廃止。「銀河」の運転区間が東京駅 - 姫路駅間に。
- 1968年：「明星」が「銀河」に統合。「なにわ」が廃止。
- 1972年：「銀河」が東京駅 - 大阪駅間に統一。
- 1975年：「銀河」1往復が廃止。
- 1976年：「銀河」が20系客車に置き換え。
- 1985年：「銀河」が14系客車に置き換え。
- 1986年：「銀河」が24系客車に置き換え。
- 2008年：「銀河」が廃止。

登場作品

「銀河」は、様々な文学作品や映像作品にも登場しています。

- 内田百閒『春光山陽特別阿房列車』
- 西村京太郎『寝台急行「銀河」殺人事件』
- 宮脇俊三『時刻表おくのほそ道』
- 三宅俊彦『寝台急行「銀河」物語』

参考文献

- 寺本光照『国鉄・JR列車名大事典』
- 今尾恵介・原武史『日本鉄道旅行歴史地図帳-全線・全駅・全優等列車- 4号・東京』