銀色の道

「銀色の道」は、1966年に発表された日本のポピュラーソングです。この楽曲は、女性デュオのザ・ピーナッツと男性コーラスグループのダークダックスによって競作という形でリリースされました。作詞は塚田茂、作曲は宮川泰が担当しており、NHKの音楽番組『夢をあなたに』（当時の『夢であいましょう』の後継番組）から生まれました。

テレビ番組で最初に披露したのはダークダックスでしたが、レコード化にあたっては、ザ・ピーナッツがシングル「ローマの雨」のB面としてキングレコードから先行して発売しました。やや遅れて、ダークダックスも同じキングレコードからシングルA面としてこの曲をリリースしています。発表された1966年末の第17回NHK紅白歌合戦では、ダークダックスが「銀色の道」を歌唱しました。この楽曲は、時代を超えて多くの人々に親しまれ、現在も両グループのベストアルバムなどに収録される機会が多い一曲です。

この曲の大きな特徴は、どこか童謡のような優しさを感じさせる落ち着いた曲調でありながら、全体に明るさが感じられる点です。作曲者の宮川泰は、作詞の塚田茂と共に楽曲制作にあたり、フォークソングからの影響を意識したと語っています。特に、ギターでの演奏を想定し、イ短調（Aマイナー）で作曲されたことが明かされています。

宮川泰は、後年、この楽曲の原点について深い思いを語っています。彼は小学生時代の一時期を北海道紋別市で過ごしましたが、そこには土木技術者であった父親が建設に関わった住友金属鉱山鴻之舞鉱山（1973年閉山）の専用軌道、鴻紋軌道がありました。宮川氏は、この廃線となった軌道跡に残った水たまりに、月の光が映り込んでいる情景を目にした時、まさに「銀色の道」だと確信したといいます。

また、作詞を手がけた塚田茂から歌詞を受け取った際、彼は幼少期を過ごした鴻之舞の風景に懐かしさを覚えたと述べています。「遠い遠い遙かな道は冬の嵐が吹いているが谷間の春は花が咲いている」という歌詞の内容が、自らの少年期の体験と重なったのです。当初、曲を作る時点ではそれほど意識していなかったものの、父親の死を経て、その後何度か紋別を訪れるうちに、父の果たせなかった思いや自身の故郷を懐かしむ気持ちが重なり合い、この曲の原点がやはり鴻之舞にあるという確信を深めていったと明かしています。

こうした楽曲の背景にある物語を受けて、2003年には鴻之舞鉱山の閉山30周年を記念し、鴻之舞鉱山跡地と紋別駅跡地の両方に「銀色の道」の歌碑が建立されました。歌碑の除幕式典が2003年7月20日に行われた際には、宮川泰自身が紋別を訪れ、両会場でこの曲を合唱する市民合唱団を指揮しました。

オリジナルシングルのリリース情報は以下の通りです。

ザ・ピーナッツ盤（キング BS-515）
A面：ローマの雨（作詞：橋本淳、作曲：すぎやまこういち、編曲：服部克久、演奏：レオン・サンフォニエット）
B面：銀色の道（作詞：塚田茂、作曲・編曲：宮川泰、演奏：レオン・サンフォニエット）

ダークダックス盤（キング BS-518）
A面：銀色の道（作詞：塚田茂、作曲：宮川泰、編曲：熊坂明）
B面：誓いのウェディング・リング（作詞：羽柴由起子、作曲：佐々木勉、編曲：熊坂明）

この楽曲は、発表以来多くのアーティストによってカバーされています。代表的な例を以下に挙げます。

伊東ゆかり、中尾ミエ（1999年）
浜田真理子、谷村美月（2005年、映画『カナリア』サウンドトラックにて複数バージョン）
ARAHIS（2006年）
福居一大（2006年、津軽三味線演奏）
みとせのりこ（2007年）
茉奈 佳奈（2009年）
Baby Boo（2014年）
華原朋美、misono（2016年）
ザ♂ベルカント5シンガーズ（2019年）
三山ひろし（2021年）

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