銭元瓘

銭元瓘（せん げんかん）：呉越を支えた王

銭元瓘（887年 - 941年）は、五代十国時代の呉越の第2代の王であり、初代の武粛王・銭鏐の七男として生まれました。元々は伝瓘という名でしたが、即位後に改名しています。

人質としての決意

902年、父・銭鏐が唐によって鎮海節度使に任命された際、宣州刺史の田頵から人質の要求がありました。兄弟たちがためらう中、伝瓘は自ら敵陣へ赴くことを志願。この勇気ある行動は、彼の決断力と度量を物語っています。帰還後、呉越の軍を率いて各地を転戦し、数々の武功を挙げました。

王位継承と治世

その活躍が認められ、兄たちに先んじて武粛王の後継者となりました。932年に父が亡くなると王位を継承。当初は王を名乗らず、933年に後唐の明宗から呉王に封じられ、934年には呉越王に封じられています。937年には、後唐に代わった後晋の高祖からも呉越王に封じられました。

銭元瓘の治世は、国内の安定と経済の発展に重点が置かれました。彼は民政に力を注ぎ、農業の振興や水利事業の推進を図りました。また、文化の保護にも努め、多くの学者や文化人を招き、呉越の文化水準を高めました。

死去と埋葬

941年、火災による負傷が原因で55歳でこの世を去りました。翌年の2月、現在の浙江省杭州市西湖区玉皇山の南に埋葬されました。

家族

銭元瓘は多くの子に恵まれました。正室の恭穆夫人馬氏や恭懿夫人呉氏（順徳王太后）をはじめ、多くに妻妾がいました。男子の中には、銭弘佐、銭弘倧、銭弘俶など、後の呉越を支える重要な人物も含まれています。

祖父: 英顕王 銭寛
祖母: 趙国太玄夫人水丘氏
父: 武粛王 銭鏐
母: 昭懿夫人陳氏
妻妾
恭穆夫人馬氏 - 馬綽の娘
恭懿夫人呉氏 - 順徳王太后
仁恵夫人許氏
魯国夫人鄜氏
崔夫人、陳夫人、沈夫人、周夫人
田氏 - 田頵の娘
男子
銭弘僎 - 養子、瓊山侯
銭弘偁（銭弘儇）- 養子、諡は節恵
銭弘侑 - 養子、もとの姓名は孫本、西安侯
銭弘侒 - 養子、もとの姓名は銭仁沢、実父は銭元瓘の異母弟の銭元(王瞿)
銭弘僔 - 孝献世子
忠献王 銭弘佐
忠遜王 銭弘倧
銭弘偡 - 呉興恭義王
忠懿王 銭弘俶
銭弘億 - 奉国節度使、諡は康献
銭弘儀 - 開国彭城侯
銭弘偓 - 衢州刺史
銭弘仰 - 台州刺史、諡は成顕
銭弘儼（銭弘信）- 昭化節度使、諡は静宣

史料

銭元瓘に関する記述は、『呉越備史』、『十国春秋』、『旧五代史』などの史料に見られます。

『呉越備史』巻3 文穆王
『十国春秋』巻79 呉越3 文穆王世家
* 『旧五代史』巻133 世襲列伝2

銭元瓘は、呉越の安定と発展に大きく貢献した王として、その名を歴史に刻んでいます。彼の勇気と決断力、そして民を思う政治姿勢は、後世に語り継がれています。

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