銭其琛

銭其琛（Qian Qichen）

銭其琛（せん きしん、1928年1月5日 - 2017年5月9日）は、中華人民共和国の政治家、外交官として活躍しました。国務院副総理、外交部長、党中央委員、党中央政治局委員を歴任し、中国外交において重要な役割を果たしました。

生涯

江蘇省嘉定県（現・上海市嘉定区）に生まれた銭其琛は、1945年から上海市の新聞社で勤務する傍ら、中国共産党の地下党員として活動しました。その後、共産主義青年団中央弁公庁研究員となり、1954年からはソ連中央団校に留学。江沢民や李鵬らと共にソ連留学組の一員として過ごしました。

1955年、駐ソ大使館に二等書記官として赴任し、留学生処副主任、研究室主任を歴任。文化大革命の時期には下放されましたが、1972年に復活し、駐ソ大使館参事官となりました。1974年8月には駐ギニア兼ギニアビサウ大使に任命され、1976年11月には外交部報道局長に就任しました。

1982年4月、外交部副部長（次官）に昇格。1987年には中ソ国境交渉の中国側代表団団長としてソ連を訪問し、交渉に当たりました。1988年4月12日には外交部長に就任し、1998年までその職を務めました。江沢民政権下で中国外交を支え、特に香港とマカオの中国本土復帰において重要な役割を果たしました。

1990年11月、中東特使としてイラクを訪問し、サッダーム・フセイン大統領と会談しましたが、クウェート問題での説得は失敗に終わりました。1991年4月8日には国務委員（副首相級）を兼任し、同年5月にはモスクワで中ソ東部国境協定に調印し、ソ連との国交正常化に成功しました。1992年には大韓民国との国交を正常化させました。

1993年3月29日、国務院副総理兼外交部長に任命され、江沢民国家主席の外遊に随行し、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、日本などの各国を訪問しました。1994年には党中央対台湾工作領導小組副組長に就任し、台湾工作でも指導的地位を占めました。1996年には全国人民代表大会常務委員会香港特別行政区準備委員会予備工作委員会主任に就任し、香港返還式典に出席しました。

2003年3月に国務院副総理を退任し政界から引退。その後は北京大学国際関係学院名誉院長を務めました。2017年5月9日、病気のため北京で死去しました。

訪日

1989年2月24日、昭和天皇の大喪の礼に楊尚昆国家主席特使として訪日し、インドネシアのスハルト大統領と国交正常化交渉開始で合意する弔問外交を行いました。

天安門事件後の外交

天安門事件後、中国は国際的な制裁を受けましたが、銭其琛は外交手腕を発揮し、状況の打開に尽力しました。日本に対しては、天皇の中国訪問を働きかけ、西側諸国の経済制裁の突破口を開きました。この訪問は日中関係史における重要な出来事となり、その裏側には銭其琛の周到な戦略がありました。

銭其琛は、中国外交において多大な功績を残し、中国の国際的地位向上に大きく貢献しました。

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