鋳銭司

鋳銭司（じゅせんし・ちゅうせんし）

概要

鋳銭司とは、古代日本に設置されていた令外官の一つで、主に銭貨の鋳造を担当していました。持統天皇の治世、すなわち7世紀末から8世紀初頭の時期に初めて設けられたこの組織は、その後も形を変えつつも日本の貨幣制度において重要な役割を果たしました。

職掌と沿革

鋳銭司は、国家の銀銭を製造し流通を管理することが主な職務でした。特に、和同開珎の鋳造時には「催鋳銭司」と呼ばれる特別な役所が設置され、鋳造業務を円滑に進めるための機関が整備されました。初期の鋳銭司は、河内国や周防国、長門国などに拠点を置いていました。

この期間の中で、周防・長門国にある鋳銭司官人の生活は特に保証されており、公廨稲を基にした「鋳銭司俸」という出挙稲が備後国や周防国に多く置かれていました。これにより、鋳銭司官人たちは安定した収入を得ることができました。

弘仁7年（817年）には鋳銭司が廃止され、この制度は一時的に途絶えましたが、その2年後の弘仁9年（819年）には新たに長門国に鋳銭使が設置されました。これは、平安京の鋳銭司が地方に移転した形であり、制度的には依然として京官として扱われました。長門の銅鉱の豊富さと、輸送コストの低さがこの移転の背景にはあったと考えられています。

さらにこの時期には、長門国の国司の職務が統合され、その税収が鋳銭事業に使われる体制も整えられました。しかし、天長2年（825年）に長門鋳銭使が廃止されると、周防国吉敷郡に周防鋳銭司が設立されました。この変更の背景には、長門国内の凶作や疫病による税収の減少があったとされています。また、長門国から周防国の吉敷郡にかけての地理的利点も強調され、鋳造された銭が簡単に畿内に運ばれるようになりました。

職員構成

鋳銭司の職員は多岐にわたり、長官、次官、判官、主典、鋳銭師などの役職がありました。これらの役職はそれぞれ細かい分業がされ、制度の運営がスムーズに行えるようになっていました。

貨幣鋳造の終焉

平安時代の後期には、貨幣鋳造そのものが衰退し、鋳銭司の役割も終わりを迎えました。以後、鋳銭司の設置は行われず、時代とともに日本の貨幣制度は大きく変わっていくことになります。

鋳銭司は、古代日本の貨幣制度に根ざした重要な役所であり、その歴史的経緯を辿ることで当時の経済の動向を理解する手助けになるでしょう。

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