鋸岳 (赤石山脈)

鋸岳：南アルプスの険しい峰々

鋸岳（のこぎりだけ）は、南アルプス（赤石山脈）の北端に位置する標高2,685メートルの山です。その名の通り、山頂付近は鋸の歯のように鋭く尖った峰々が連なり、険しい山容が特徴です。日本二百名山、山梨百名山のひとつに数えられ、山梨県と長野県の県境に跨る南アルプス国立公園の特別保護地区に指定されています。

圧倒的な存在感と周辺の景観

甲斐駒ヶ岳の北西に隣接する鋸岳は、その独特の形状から遠くからでも容易に識別できます。山頂は、北端に近い三角点（2,606.8メートル）よりも南側の第一高点（2,685メートル）が最も高く、その周辺には第二高点（2,675メートル）、第三高点など、複数のピークが連なっています。南東側には、烏帽子岳（2,594メートル）と三ツ頭（2,589メートル）が続き、連峰全体で南アルプスの雄大な景観を形成しています。戸台口からの南アルプス林道バスの車窓からは、鋸岳の全貌を眺めることができます。また、富士川（釜無川）および天竜川水系の戸台川の支流の源流でもあります。

挑戦的な登山ルートと山小屋

鋸岳への登山ルートは、戸台川沿いの沢を遡行するいくつかのコース（角兵衛沢、熊ノ穴沢、七丈ヶ滝尾根）と、甲斐駒ヶ岳から稜線上を辿るコースがあります。いずれのコースも一般登山道とは異なり、岩場や急斜面が多く、ある程度の岩登りの技術と経験が必要です。そのため、山梨百名山の中でも難易度が高い山とされており、登山者数は隣接する甲斐駒ヶ岳に比べて非常に少ないです。

山小屋は、三ツ頭と甲斐駒ヶ岳との鞍部にある六合目石室（無人、収容人数10名）のみで、2006年秋に改修されました。近辺には営業している山小屋はなく、最寄りの山小屋は甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根の七丈小屋か北沢峠の山小屋になります。このため、登山計画を立てる際には、十分な準備と計画が必要です。宿泊を伴う登山は、特に注意が必要です。

周辺の山々

鋸岳周辺には、多くの山々が連なります。その中でも特に有名なのは、甲斐駒ヶ岳（2,967メートル）です。他に、雨乞岳（2,037メートル）、日向山（1,660メートル）、鞍掛山（2,037メートル）などがあります。これらの山々を巡る縦走ルートも存在しますが、高度な登山技術と体力、計画性が求められます。

鋸岳登山を楽しむために

鋸岳は、その険しさゆえに、登山者にとって大きな挑戦となる山です。登山を計画する際には、自身の体力や技術レベルを正確に把握し、適切な装備を準備することが重要です。また、最新の天気予報を確認し、天候の変化に備えることも不可欠です。経験豊富な登山者と同行したり、ガイドを雇うことも、安全な登山に繋がるでしょう。十分な準備と計画の下、鋸岳の雄大な自然と、その険しさから得られる達成感を味わってください。

参考資料

『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、ISBN 4-7795-0000-1
『アルペンガイド10 南アルプス（ヤマケイ・アルペンガイド）』山と溪谷社、ISBN 978-4-635-01358-1
* 『新・分県登山ガイド（改訂版）山梨県の山』山と溪谷社、ISBN 978-4-635-02364-1

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