錦の袈裟

錦の袈裟（にしきのけさ）

「錦の袈裟」は落語演目のひとつで、主に東京の落語家によって演じられています。物語は、上方落語の『袈裟茶屋』を舞台に、江戸の吉原遊廓に置き換えたもので、明治時代に初代柳家小せんが登場人物を増やして改作したものにあたります。

概要

この演目の原作には、1777年に発行された笑話本『順会話献立』の一篇「晴れの恥」があり、内容は男が遊郭で見せびらかそうと古着屋から借りたちりめんの長襦袢の値札が見えてしまい、恥ずかしい思いをするというものです。戦時中の昭和にはそのエロティックな描写が問題視され、「禁演落語五十三種」のひとつに指定されました。

主な演者

多くの著名な演者が『錦の袈裟』を演じており、物故者としては三代目三遊亭金馬、二代目古今亭圓菊、五代目三遊亭圓楽などが挙げられます。現役の演者では三代目柳家権太楼、古今亭菊春、柳家一琴、三代目古今亭圓菊などが活躍しています。

あらすじ

物語は、町内の若い職人たちが集まるところから始まります。仲間が話す噂によれば、普段仲の悪い隣町の連中が派手な緋縮緬の長襦袢を着て吉原に遊びに行き、肝心の自分たちを笑いものにしたという話でした。仲間たちは憤慨するが、兄貴分が今度はそれを超える趣向を提案します。兄貴は質屋で見つけた錦の布を借りて、ふんどしに締めて遊郭に繰り込もうと盛り上がります。しかし、11人いる仲間のうち1人分が足りず、与太郎は「カミさんに許可をもらわないと」と言います。

与太郎は家に帰り、妻に吉原に行く許可を求めます。妻は初めは怒るものの、町内の者たちと一緒に行くことを聞き承諾します。それから与太郎は錦のふんどしを手に入れようと考え、妻から「お寺の和尚さんが持っている袈裟を借りてくるといい」と提案されます。

与太郎はお寺へ行き、和尚に袈裟を借りようとしますが、最初はうまく話ができません。何度か混乱しながらも、和尚から袈裟を借りることに成功します。

その晩、仲間たちは妓楼で遊び、頃合いを見計らって服を脱ぎ、ふんどし一枚で総踊りを始めます。その姿に驚いた遊女たちは、仲間たちを大名のように見立て、「あの人たちは昔の大名か、今の華族だ」と噂します。

しかし、翌朝になると与太郎がいないことに気づき、仲間たちは彼を呼びに行くと、なんと与太郎は花魁たちに囲まれて寝ていました。目を覚ました与太郎は、花魁たちに、「今朝は返さない」と言われ、和尚への約束を思い出して慌てるのでした。こうして、落語の中での与太郎の騒動が描かれ、笑いを誘います。

脚注

この演目は、遊郭独特の雰囲気を持ちながらも、仲間たちの企てや与太郎の失敗を理由にしたコメディの側面が強調されています。また、同様のテーマを持つ『明烏』といった他の落語作品とも共通する点があると言えるでしょう。

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