錦座

錦座（にしきざ）：八戸の劇場・映画館

錦座は、かつて青森県八戸市に存在した劇場・映画館です。大正時代から昭和にかけて、八戸の文化を彩る重要な役割を果たしました。

歴史

初代錦座

1916年（大正5年）11月24日、西村喜助によって三戸郡八戸町（現在の八戸市）二十八日町に錦座が開館しました。総工費は約2万円とされ、当時としては巨額の投資でした。ルネサンス建築を模した建物は、「東北一の規模を誇る大劇場」と地元紙で報じられました。

こけら落としは中村吉右衛門一座による歌舞伎公演で、その後も歌舞伎を中心に様々な演目が上演されました。1917年（大正6年）には、八戸水力電気による「一万点灯祝賀会」でイルミネーションが点灯し、観客を魅了しました。

1918年（大正7年）には、鮫漁港期成同盟会の発会式が開催され、1,000人以上の聴衆が集まりました。また、1923年（大正12年）には、八戸初の新劇として武者小路実篤の「仏陀と孫悟空」などが上演され、新たな文化の発信地となりました。

しかし、1924年（大正13年）5月21日、八戸大火により初代錦座は焼失してしまいました。

2代目錦座

1926年（大正15年）9月13日、錦座は3階建ての劇場として再建されました。再建後は映画館としての役割が強まりました。1929年（昭和4年）には、八戸毎日新聞社主催の市議候補連合演説会が開催され、約1,000人の聴衆を集めました。八戸出身のソプラノ歌手、原信子も錦座の舞台に立ったことがあります。

八戸東宝劇場

1942年（昭和17年）に西村喜助が死去すると、錦座は東宝作品を上映する八戸東宝劇場となりました。1946年（昭和21年）には、第一回総選挙のための立会演説会が開催され、政治の場としても利用されました。

1970年代初頭頃、八戸東宝劇場は閉館し、1973年（昭和48年）には老朽化した建物が取り壊されました。跡地には八戸第一生命ビルが建設されています。

設備（再建時）

観覧席: 1階席と2階席に分かれ、半円形で周囲がガラス窓となっていた。特等席が3円、一等席が1円、貸座布団が5銭。
売店: 劇場1階にあり、サイダー、林檎、餅、煎餅などを販売。
食堂: 劇場2階に喫茶室、3階に大食堂があった。

錦座の意義

錦座は、劇場、映画館として、八戸の文化、娯楽の中心地として重要な役割を果たしました。演劇、映画、音楽、演説会など、様々なイベントが開催され、多くの人々に親しまれました。錦座の存在は、八戸の歴史を語る上で欠かせないものとなっています。

参考文献

滝尻善英『錦座ものがたり 西村喜助夢一代記』、伊吉書院、2009年
八戸市史編さん委員会『八戸市史 通史編』八戸市、1976年
八戸市史編纂委員会『新編八戸市史 近現代資料編2』八戸市、2008年

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