原信子

原信子の生涯と功績

原信子は、1893年に青森県八戸市で生まれ、後に上京。幼少期から音楽に親しみ、三浦環に師事し声楽の道へ進みました。東京音楽学校では器楽科に入学しましたが、後に声楽科へ転科。その後、ハンカ・ペツォールトやアドルフォ・サルコリに師事し、本格的に声楽を修めました。

20歳で上海の劇場で「蝶々夫人」でデビューし、その後、三浦環の後任として帝国劇場歌劇部へ。1913年には「魔笛」で帝劇デビューを果たしました。帝劇歌劇部が解散後、赤坂ローヤル館に移り、1917年には自身の歌劇団を設立。浅草を中心に大衆的なオペレッタを次々と上演し、田谷力三、藤原義江らと共に浅草オペラの一時代を築きました。

1919年に突如引退を宣言し、翌年には本格的なオペラを学ぶためにアメリカへ渡りました。マンハッタンオペラでの出演という幸運に恵まれ、その後カナダを経由してイタリアへ留学。サルヴァトーレ・コットーネに師事する傍ら、プッチーニやマスカーニとも交流を深めました。

1928年、原信子は日本人として初めてミラノ・スカラ座の専属歌手となり、1933年まで在籍。プッチーニやトスカニーニの指導を受け、国際的な舞台でその才能を開花させました。スカラ座退団後の1934年に帰国し、歌劇研究所を設立してオペラ運動に尽力。藤原歌劇団では「トスカ」や「ミニヨン」などの作品に出演しました。

1952年には、團伊玖磨作曲の「夕鶴」初演で主役のつう役を演じました。晩年まで、原信子歌劇研究所で後進の指導にあたり、日本のオペラ界の発展に大きく貢献しました。

1979年、東京都内で85歳で生涯を閉じました。その功績は、没後も多くの人々に語り継がれています。

録音活動

原信子は、その美しい歌声を多くのレコードに残しています。留学前には、唱歌やアリアなどの録音を積極的に行っていました。スカラ座所属時代の1928年には、イタリアのフォノティピアで、プッチーニの「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」「可愛い坊や」を、また本居長世作曲の「関の夕ざれ」と「別後」を録音しました。これらのレコードは、当時日本でもオデオン[[レコード]]から発売され、その人気は海外でも衰えることはありませんでした。

現在でも、SPレコードを復刻したCDが発売されており、原信子の歌声を聴くことができます。「埴生の宿」や「故郷の廃家」、「ソルヴェーグの歌」など、数々の名曲を後世に伝えました。

家族と関連人物

原信子の父親は、八戸の侠客であった原十目吉であるとされていますが、詳細は不明です。原十目吉は、社会事業にも熱心で、バプティスト伝道師の中野徳次郎から受洗し、各地で貧民調査を行いました。また、台湾の日本統治時代には、華民会館の設立にも関わりました。原信子の三女のちゑは子爵清岡龍の妻となりましたが、早世しました。

バレリーナの片山安子は、原信子の従妹にあたります。片山安子の父である片山潜の後妻は、原たま（賜子）といい、同じく八戸出身です。また、原信子の夫は英国人ギャズビーです。


原信子の生涯は、その歌声と共に、日本のオペラ史に燦然と輝いています。国際的な舞台で活躍し、後進の育成にも尽力した原信子の功績は、今後も語り継がれていくでしょう。

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