鍋島元茂

鍋島元茂：剣豪大名、波乱の生涯と剣術への情熱

鍋島元茂は、江戸時代前期を代表する大名であり、類まれな剣豪として知られています。肥前国小城藩の初代藩主として、7万3000石という莫大な所領を治め、その名声は現代にも伝わっています。通称は三平、官位は従五位下・紀伊守に叙任されました。

元茂は、肥前佐賀藩主・鍋島勝茂の次男として、のちに蓮池藩の城下となる小曲館で誕生しました。母は小西三右衛門の娘である岩と伝えられています。幼名は直元でした。当初は嫡男として将来を嘱望されていましたが、元茂4歳の時、父勝茂が徳川家康の養女・菊姫と再婚したことを機に廃嫡されてしまいます。これは、菊姫との間に生まれた子を跡継ぎにしようという勝茂の意向によるものと推測されています。

廃嫡された元茂は、江戸に人質として送られるという運命を辿ります。しかし、祖父である鍋島直茂の死去後、直茂の隠居領であった1万石を継承。その後、幾度かの加増を経て、寛永19年（1642年）には肥前小城に7万3000石を与えられ、小城藩初代藩主の座に就きました。この領地は鍋島家中において相当な高禄であり、廃嫡されたとはいえ、父からの冷遇を受けていたとは言い切れない状況であったことが伺えます。

元茂は島原の乱にも父と共に従軍するなど、武家の棟梁としての責務を果たしました。しかし、元茂の生涯において特筆すべきは、その卓越した剣の腕です。彼は当代随一の剣豪として名を馳せ、柳生宗矩から印可書を最初に受けたと伝えられています。さらに、木村友重と共に徳川家光の打太刀を務めたという逸話も残されています。柳生宗矩とは30年に及ぶ師弟関係を築き、死の直前には秘巻『兵法家伝書』を授けられたとされています。この事実は、元茂の剣術に対する深い造詣と、柳生宗矩からの信頼の厚さを示すものと言えるでしょう。

承応3年（1654年）、元茂は世を去ります。享年については諸説ありますが、50代前半であったと推測されます。跡を継いだのは長男の鍋島直能でした。元茂の生涯は、廃嫡という苦難を乗り越え、剣豪として、そして大名として、数々の偉業を成し遂げた波乱に満ちたものでした。その生き様は、後世の武家社会に多大な影響を与え、現代においてもなお、多くの人々を魅了し続けています。

系譜

父: 鍋島勝茂
母: 岩（小西三右衛門の娘）
正室: 於仁王（高岳院、鍋島茂里の娘）
子女: 鍋島直能（長男）、鍋島直朗（次男）、鍋島直治（三男）、養女（鍋島勝茂の娘、鍋島直広室）

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