鍋島茂義

鍋島茂義：佐賀藩の先駆的軍事・科学技術導入者

鍋島茂義（なべしま しげよし）は、江戸時代後期の武士であり、肥前国佐賀藩の家臣でした。武雄鍋島家の9代当主として、また佐賀藩の自治領である武雄領の領主として知られています。彼は、藩の財政改革に尽力する一方で、西洋の軍事技術や科学技術を積極的に導入し、幕末期の佐賀藩の発展に大きな影響を与えました。

佐賀藩政への関与

寛政12年（1800年）、27代武雄領主・鍋島茂順の子として生まれた茂義は、文政5年（1822年）に22歳で佐賀藩の請役（藩務を総理する執政職）に就任しました。当時の佐賀藩は財政難に苦しんでおり、茂義は人頭税の導入に反対するなど、財政改革に取り組みました。

しかし、前藩主・鍋島斉直との対立により、一度は請役を辞任します。その後、再び請役に就任するものの、斉直の娘盛姫と藩主・斉正の婚儀に関する問題や、斉直の遊興による藩の財政悪化を批判したことで、再び請役を罷免され、切腹を命じられます。しかし、支藩の小城藩主らの諫言により、切腹を免れました。

その後、茂義は三度請役に就任し、斉正の世継ぎ教育にも関わりました。天保元年（1830年）に斉正が藩主となると、茂義は財政改革を主導しましたが、前藩主・斉直の江戸出府を諫めたことが原因で、三度目の請役罷免となり、藩政から退きました。その後、茂義は武雄に戻り、隠居生活を送ることになります。

軍事研究

茂義の功績として特筆すべきは、西洋式軍事技術の導入です。請役を罷免される前の天保2年（1831年）には、雨天でも使用できる火打石銃をオランダから輸入し、オランダ人を招いて軍事教練を実施しました。また、家臣の平山醇左衛門を高島秋帆に入門させ、西洋式砲術を学ばせました。

天保5年（1834年）、茂義自身も高島秋帆に入門し、翌年には免許皆伝を受けています。彼は、高島秋帆が日本で初めて鋳造した西洋式大砲を献上されるなど、深い交流がありました。武雄領では、西洋式大砲の鋳造や試射も行われ、茂義は日本で最も早く西洋の軍事技術を導入した人物として知られています。

佐賀藩は、武雄領の軍事技術に注目し、平山醇左衛門を砲術稽古のために取り立てました。しかし、高島秋帆が捕縛されると、その影響で武雄領でも高島色が払拭される動きがありましたが、茂義は佐賀藩の火術方で新型砲の研究を続けました。

科学研究

茂義は、科学技術の導入にも熱心でした。武雄には、茂義がオランダから購入した138冊の蘭書コレクションや、地球儀、天球儀、測量器具、薬品などが残されています。武雄では、理化学実験用のガラス製品や、蘭引、乳鉢などの磁器が製造され、茂義自身もこれらの器具を用いて理化学実験を行っていました。特に、火薬や雷管の研究に力を入れていたと言われています。

佐賀藩では、嘉永4年（1851年）に精煉方（理化学研究所）が設けられましたが、武雄領の研究結果は大いに参考にされたと考えられています。また、嘉永7年（1854年）には、茂義が蒸気船建造の責任者に任命されました。これは、茂義が既に蒸気機関についての知識を有していたことを示しています。

系譜

父：鍋島茂順（1760-1835）
母：不詳
室：竈姫 - 鍋島斉直娘、鍋島直正姉
子女
男子：鍋島茂昌（1832-1910）
男子：後藤保明
男子：土肥成明
女子：藤 - 鍋島茂元室


鍋島茂義は、佐賀藩の財政改革に携わる一方で、西洋の先進的な軍事技術や科学技術を積極的に導入し、幕末期の佐賀藩の発展に大きく貢献しました。その先見性と行動力は、日本の近代化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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