高島秋帆

高島秋帆（たかしま しゅうはん）

高島秋帆は、江戸時代後期から幕末にかけて活躍した砲術家であり、高島流砲術の創始者として知られています。彼は「火技之中興洋兵之開祖」と称され、日本の砲術史において重要な人物です。

生涯

1798年、長崎の町年寄の家に生まれ、幼少期から海外との交流が盛んな長崎で育ちました。そのため、日本の砲術と西洋の砲術の差に衝撃を受け、西洋砲術を学ぶ決意をします。独学でオランダ語を習得し、オランダ人から洋式砲術を学び、1834年に高島流砲術を完成させました。この年、肥前佐賀藩の武雄領主である鍋島茂義が入門し、翌年には免許皆伝を与え、自作の大砲を献上しています。

アヘン戦争での清の敗北を知った秋帆は、幕府に火砲の近代化を訴える意見書を提出しました。1841年には、武蔵国徳丸ヶ原で日本初の洋式砲術と銃陣の公開演習を実施し、その革新的な戦術と装備は幕府関係者を驚かせました。この際、彼が着用した筒袖上衣に裁着袴、黒塗りの円錐形の銃陣笠は、当時の人々にとって非常に斬新なものでした。演習の成功により、幕府から砲術の専門家として重用され、老中阿部正弘からは「火技中興洋兵開基」と讃えられました。

幕命により、江川英龍や下曽根信敦に洋式砲術を伝授し、高島流砲術は広まりました。しかし、1842年に長崎会所の杜撰な運営の責任を問われ、逮捕・投獄されてしまいます。この背景には、秋帆の資金力を妬んだ鳥居耀蔵の讒訴や、長崎会所の経理の乱脈が銅座の生産を阻害することを恐れた老中水野忠邦の意向があったとされています。幽閉中も諸藩は密かに秋帆に接触し、洋式兵学を学んでいました。1853年、ペリー来航を機に赦免され出獄し、鎖国・海防政策の誤りを悟り、開国・交易論を唱えるようになりました。

出獄後は、幕府の富士見宝蔵番兼講武所支配および師範となり、砲術訓練の指導に尽力しました。1864年には教練書を編纂し、1866年に69歳でその生涯を閉じました。

後世への影響

高島秋帆は、日本の軍事近代化に大きな影響を与えました。彼は、西洋砲術を日本に導入し、その普及に尽力しました。門人たちは、彼の教えを受け継ぎ、日本の軍隊や学校の号令の基礎を築きました。ただし、秋帆自身は師の教えを固く守り、号令にはオランダ語を用いていました。

当初、オランダ語の号令は理解が難しく混乱を招きましたが、門弟たちが日本語化を試み、その号令が今日の日本の軍隊や学校で使われる号令のルーツとなっています。「進め（マルス）」「止まれ（ハルト）」「気をつけ（ゲーフトアクト）」など、現在でも使われる号令の多くは、高島秋帆が導入した西洋砲術の影響を受けています。

現在でも、高島流砲術は東京都板橋区の有志によって継承され、全国各地で実射演武が行われています。注目すべきは、演武で使用される号令が当時のオランダ語号令であることで、その動きは和流砲術とは異なりスピーディーで、後の軍隊に受け継がれる過渡期の動きを体現しています。

高島流砲術の門下

高島秋帆の門下からは、多くの優秀な人材が輩出されました。

高島門下の三龍
下曽根信敦（旗本）
江川英龍（旗本、韮山代官）
村上範致（三河田原藩）
平山醇左衛門（佐賀藩武雄領）
有坂成章（長州藩岩国領）
池部啓太（肥後藩）
成田正右衛門（薩摩藩）

登場作品

高島秋帆は、様々な作品にも登場しています。

漫画
みなもと太郎『風雲児たち』
小説
松本[[清張]]『天保図録』
佐伯泰英『夏目影二郎始末旅』
テレビドラマ
『天皇の世紀』（1971年、朝日放送 演：中村翫右衛門）
『青天を衝け』（2021年、NHK大河ドラマ 演：玉木宏）

高島秋帆は、日本の近代化に貢献した偉人として、今もなお多くの人々に記憶されています。

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