鍵屋の辻の決闘

鍵屋の辻の決闘とは

鍵屋の辻の決闘は、寛永11年（1634年）11月7日に、渡辺数馬が弟の仇である河合又五郎を、荒木又右衛門の助太刀を得て討った事件です。この仇討ちは、伊賀国上野の鍵屋の辻（現在の三重県伊賀市小田町）で行われたため、「伊賀越の仇討ち」とも呼ばれています。曾我兄弟の仇討ち、赤穂浪士の討ち入りと並び、日本三大仇討ちの一つとして知られ、後世には歌舞伎や講談など、様々な形で語り継がれてきました。

事件の経緯

寛永7年（1630年）、岡山藩主・池田忠雄が寵愛していた小姓の渡辺源太夫に、藩士の河合又五郎が横恋慕し、関係を迫ります。しかし、源太夫が拒絶したため、又五郎は逆上し、源太夫を殺害してしまいます。その後、又五郎は江戸へ逃亡し、旗本の安藤次右衛門正珍にかくまわれます。激怒した忠雄は幕府に訴え、又五郎の引き渡しを要求しますが、旗本衆はこれを拒否し、大名と旗本の対立に発展します。

しかし、寛永9年（1632年）に忠雄が病死したため、事態は急変します。忠雄は死に際し、又五郎を討つよう遺言しました。池田家は子の光仲が家督を継ぎましたが、幼少のため、因幡国鳥取へ国替えとなります。渡辺数馬は、仇討ちのため、脱藩し、姉婿である剣術の達人、荒木又右衛門に助太刀を依頼しました。

数馬と又右衛門は、江戸や京都を往来しながら又五郎の行方を捜索し、寛永11年（1634年）11月に、ついに又五郎の居場所を突き止めます。そして、11月7日、伊賀上野城下の入口にある鍵屋の辻で決闘が行われました。渡辺側は、数馬、又右衛門、数馬の若党2人の計4人、対する河合側は10人ないし11人で、死闘が繰り広げられました。

決闘の結果、渡辺側は1人、河合側は又五郎を含む4人が死亡しました。後世には、又右衛門が「36人斬り」を成し遂げたという逸話が語り継がれていますが、これは史実ではありません。仇討ちを遂げた数馬と又右衛門は、世間の注目を集めました。特に、又右衛門は賞賛を浴び、後日、鳥取藩に迎えられることになります。しかし、又右衛門は鳥取に到着後、間もなく死亡したため、その死には様々な憶測が飛び交っています。

鍵屋の辻のその後

決闘後、又右衛門は折れた刀が新刀であったことを戸波又兵衛に指摘され、戸波流に入門し剣術を磨いたとされています。

現在、決闘の地は「鍵屋ノ辻史跡公園」として整備されており、園内には伊賀越資料館があります。また、かつては茶屋「数馬茶屋」も存在していましたが、老朽化のため閉店しました。

鍵屋の辻の決闘を題材にした作品

この仇討ちは、江戸時代から現代に至るまで、歌舞伎、浄瑠璃、講談、小説、映画、テレビドラマなど、様々なジャンルで題材とされてきました。特に、荒木又右衛門を主人公とした作品が多く、大衆の人気を集めています。

主な作品

歌舞伎・演劇：『伊賀越乗掛合羽』、『伊賀越道中双六』
講談：『伊賀の水月』
小説：『天下騒乱 鍵屋ノ辻』、『荒木又右衛門』など多数
映画：『荒木又右衛門』を題材とした作品多数
* テレビドラマ：『春の坂道』、『江戸を斬る』、『柳生新陰流』、『荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻』など多数

鍵屋の辻の決闘は、単なる仇討ち事件にとどまらず、武士道の精神、人間関係の複雑さ、そして復讐の悲劇を描いた物語として、後世に語り継がれることでしょう。

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