鎮守府 (日本海軍)

鎮守府について

鎮守府（ちんじゅふ）は、旧大日本帝国海軍の軍事拠点であり、艦隊を指揮するための重要な機関でした。そのルーツは1871年に設置された海軍提督府に遡ります。この機関は、各地に設けられた鎮守府を通じて、日本の海域の安全を守る役割を果たし、海軍区の防備、艦艇の管理、兵員の育成、さらには施政の運営を統括しました。

鎮守府の役割

各鎮守府では、いくつかの重要な任務がありました。まず、所属する艦艇の統率や補給を担当し、出動準備を整えることが挙げられます。また、兵員の徴募や訓練を行い、海軍の戦力を維持する役割も果たしていました。鎮守府の司令長官（通常は海軍大将か中将）は、海軍大臣や海軍軍令部長の指示を受けて軍事戦略を練ることが求められていました。

鎮守府の設立と歴史

鎮守府の設立はフランスの海防思想に影響を受けており、特に大西洋と地中海を意識した二正面防衛の考え方が背景にあります。しかし、フランスでは明治末期にはこのシステムはほとんど役に立たなくなっていました。日本は1875年に海域を東西に分け、その指揮権を二人の指揮官に委ねる形を採用しました。

1876年には、東海鎮守府と西海鎮守府の二つを設置することが決まりました。まず東海鎮守府は横浜に設けられ、1884年に横須賀に移転して正式に横須賀鎮守府として機能することとなります。西海鎮守府については、長崎に設置の通達は出されたものの、実際には開設されることはありませんでした。

その後、1886年に新たに海軍条例が制定され、日本沿岸は5つの海軍区に分けられ、鎮守府が設置されることとなります。これにより、横須賀以外にも呉鎮守府（1889年設立）、佐世保鎮守府（1889年設立）、舞鶴鎮守府（1901年設立）が開庁されました。

その後の変遷

設立当初に計画されていた室蘭鎮守府は1903年に取り止められ、その後大湊が要港となるも、1941年に大湊警備府に改変されました。この警備府は固有の艦艇や戦隊を持たないものの、重要な防衛拠点として機能しました。さらに、1905年に旅順口鎮守府が設置され、1906年には旅順鎮守府に改称されましたが、1914年には廃止されました。

舞鶴鎮守府は1923年にワシントン軍縮条約の影響で廃止され、要港部に格下げされましたが、1939年に復活します。そして、鎮守府は1945年に日本が第二次世界大戦の敗北を受けて廃止されます。その後、1952年に発足した警備隊や1954年の海上自衛隊は、かつての鎮守府に相当する地方隊を設置しました。

現在、日本国内には横須賀地方隊、呉地方隊、佐世保地方隊、舞鶴地方隊、大湊地方隊が存在しており、大湊は警備府から昇格した特異な位置付けとなっています。また、2016年には鎮守府関連施設が「日本近代化の躍動を体感できるまち」として「日本遺産」に認定されています。これにより、鎮守府の歴史は今も多くの人々に語り継がれています。

もう一度検索