鎮沅府

鎮沅府（ちんげんふ）は、中国にかつて存在した府であり、明代から清代にかけて、現在の雲南省鎮沅イ族ハニ族ラフ族自治県一帯に設置されていました。

鎮沅府の成立と変遷

1402年（明の建文4年）、この地にはまず鎮沅州が設置されました。その後、1406年（永楽4年）に鎮沅州は鎮沅府へと昇格し、雲南省に属する府として統治されることになりました。鎮沅府は禄谷寨長官司を管轄下に置き、刀氏が土司として知府を世襲していました。

この時期の鎮沅府は、地方の有力者である土司が政治を担う、土司制度に基づく統治が行われていたことが特徴です。刀氏のような有力な土司が、地域を安定的に統治する役割を担っていました。

清代の変革と降格

1727年（清の雍正5年）になると、清朝は地方行政制度を改革する一環として、改土帰流政策を実施しました。これにより、土司による統治から、中央政府から派遣された官僚による統治へと移行しました。この改革は、中央集権体制を強化するものであり、地方の統治をより中央の意向に沿わせることを目的としていました。

その後、1770年（乾隆35年）には、鎮沅府は鎮沅直隷州へと降格しました。この降格は、行政区画の再編によるものであり、鎮沅府の重要度が変化したことを示しています。しかし、鎮沅直隷州は依然として地方の行政を担う重要な役割を担っていました。

鎮沅直隷庁への昇格と廃止

1840年（道光20年）、鎮沅直隷州は鎮沅直隷庁へと昇格しました。この昇格は、地域の重要性が再び高まったことによるものと考えられます。直隷庁は、州よりも上位の行政区画であり、より広範囲の地域を管轄していました。

しかし、1913年、中華民国が成立すると、古い行政制度は廃止され、鎮沅直隷庁もまた廃止されました。これにより、鎮沅府から続く一連の行政区画の歴史は終わりを告げ、新たな行政制度へと移行しました。

まとめ

鎮沅府は、明代に成立し、清代を経て中華民国初期まで存在した地方行政区画であり、その変遷は中国の地方行政制度の変遷を反映しています。土司制度から流官による統治への移行、行政区画の昇格と降格など、さまざまな変化を経て、最終的には廃止されました。この歴史は、中国の行政制度が時代とともに変化してきたことを示す重要な事例の一つと言えるでしょう。

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