鎮西奉行

鎮西奉行とは

鎮西奉行は、鎌倉幕府成立期に鎮西（九州）に置かれた役職で、九州の御家人を指揮・統制する役割を担いました。『吾妻鏡』には「鎮西奉行」や「鎮西守護」という呼称が見られます。

ただし、鎮西奉行が幕府の正式な官職であったかどうかについては、明確な資料による裏付けがないとされています。そのため、幕府から鎮西の武士の統括を委任された人物の呼称であるという説も存在します。後に設置される鎮西探題の前身ともいえる存在です。

概要

鎮西奉行の始まりは、1185年（文治元年）末から1186年（文治2年）頃にかけて、天野遠景が九州の御家人の統率と軍事・警察を担うために派遣され、大宰府に守護所を置いたこととされています。

しかし、天野遠景と比較して、その後に鎮西奉行に就任したとされる人物は権限が小さく、同一の職と言えるのかどうかを含めて議論があります。遠景の後任者については、以下のように諸説分かれています。

天野遠景のみで廃絶したとする説（相田二郎の説）
中原親能が就任したとする説
武藤資頼が就任したとする説
中原親能も武藤資頼も就任したとする説（石井進の説）

瀬野精一郎は、遠景後の後継者について諸説あることをまとめた上で、「鎮西奉行は一般的呼称にすぎず、鎌倉幕府の正式な官職名ではなかったとする説（佐藤進一説）もあるごとく、その性格がなお不明瞭な点が多いことに起因しているといえる」と指摘しています。

『佐賀市史』では、鎮西奉行に中原親能、武藤資頼が就任し、大宰少弐に就いた武藤資頼が子の資能に大宰少弐と鎮西奉行を継がせて代々この職を世襲したとしています。しかしその後、永仁元年（1293年）に鎮西探題が設置され、肥前国守護とともに北条氏が継承することとなり、鎮西探題と少弐氏の対立が鎌倉幕府滅亡まで続いたとしています。

鎮西奉行の性格については不明な点が多く、今後の研究が待たれるところです。

参考文献

『国史大辞典第9巻』国史大辞典編集委員会、吉川弘文館、1988年。

関連項目

鎮西探題

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