天野遠景

天野遠景（あまの とおかげ）

天野遠景は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した武将です。藤原南家工藤氏の流れを汲み、吉川氏と同族にあたります。伊豆国田方郡天野に居を構え、その地名にちなんで天野氏を称しました。

生涯

永治元年（1141年）に鎌倉の亀谷で生まれたという説があります。当初は平家の家人でしたが、天野郷が源頼朝が幽閉されていた蛭ヶ小島に近かったことから、伊東祐親のもとで頼朝と交流を深め、親交を結びました。この縁から、頼朝が挙兵すると初期からの側近として活躍します。

一説には、天野氏は狩野川河口を中心に駿河湾で活動していたと考えられています。

治承4年（1180年）の石橋山の戦いでは、息子の政景と共に参戦しますが、敗北を喫します。その後、伊豆国内で平氏方との戦闘を繰り広げ、同年10月の富士川の戦いの後には、平氏軍に合流しようとした伊東祐親を捕縛するという功績を挙げました。寿永2年（1183年）には、信濃国を中心に勢力を拡大していた木曾義仲への使者を務め、義仲の嫡子・義高を人質として鎌倉に送ることに成功しています。

元暦元年（1184年）には、頼朝の命を受けて甲斐源氏の一条忠頼を謀殺しました。

治承4年（1180年）の伊東祐親捕縛から元暦元年（1184年）の一条忠頼殺害事件までの間、『吾妻鏡』に天野遠景の名が登場しないことから、この時期に遠景が頼朝と甲斐源氏の双方に名簿を提出し、二つの勢力に二股をかけていた可能性も指摘されています。当時の伊豆国や東駿河は、頼朝の支配地域と甲斐源氏の勢力圏の境界に位置していたため、このような行動も考えられます。

同年8月、源範頼率いる平氏追討軍に従い、周防国から豊後国へと渡ります。文治元年（1185年）3月11日には、平氏追討に大功があった12人のうちの一人として、頼朝から感状を授与されました。同年には、追放された源義経の探索と、鎮西における鎌倉幕府勢力の確立を目的とした九州惣追捕使に任命され、律令制度上の鎮西統治機関であった大宰府の機構に関与し、その実権を掌握しました。肥前国での豪族の狼藉を鎮圧したり、宇都宮信房と鬼界ヶ島の平氏残党を征伐するなど、九州・大宰府方面で約10年もの間、活躍しました。しかし、鎮西御家人からの協力は得られず、また遠景の鎮西における新たな政策に対する寺社や荘園領側の抵抗も激しかったため、建久5年（1194年）頃までには奉行職を解任され、鎌倉へ帰還することとなりました。

建久10年（1199年）正月の頼朝死去に伴い、出家して蓮景と号しました。その後、梶原景時の変や建仁3年（1203年）9月の比企能員暗殺にも関与したとされています。没年は不明ですが、晩年は不遇であったと見られ、死期が迫った承元元年（1207年）6月2日には、治承4年以来の勲功11ヶ条を挙げて恩賞を求めています。『幕府諸家系譜』では承元2年（1208年）8月15日に63歳で死去したとされ、『萩藩閥閲録』では貞応元年（1222年）12月27日に死去したとされています。

参考文献

菊池紳一 著「鎌倉時代の天野氏について」
清水亮『鎌倉幕府御家人制の政治史的研究』
関幸彦; 福田豊彦 編『源平合戦事典』
東京帝国大学文学部史料編纂所 編『大日本史料』
防長新聞社山口支社 編『近世防長諸家系図綜覧』
復刻版 田村哲夫編修 編「一門右田毛利家」『近世防長諸家系図綜覧』

関連作品

テレビドラマ『草燃える』（1979年、NHK大河ドラマ、演：坂本由英）
テレビドラマ『義経』（2005年、NHK大河ドラマ、演：真夏竜）

関連項目

* 天野氏

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