長尾当長

長尾 当長（ながお まさなが）は、日本の戦国時代を生きた武将であり、足利長尾氏の当主を務めた人物です。大永7年（1527年）、父である長尾憲長の二男として誕生しました。

家督相続と関東管領への仕官

若くして父・憲長の跡を継ぎ、足利長尾氏の家督を継承しました。当初は、当時の関東管領であった上杉憲當（後の憲政）から偏諱を受け、「當長」と名乗ったとされています。関東管領家の家宰という重職に就き、そのもとで活躍。足利藤氏が元服した際には、但馬守の官職を与えられるなど、要職を歴任しました。

北条氏への帰属と上杉家の衰退

しかし、関東の情勢が変化し、関東管領上杉家が後北条氏の圧力により関東からの撤退を余儀なくされると、当長が務めていた関東管領家家宰職も事実上その実権を失いました。これに伴い、当長もまた後北条氏の氏康に降る道を選びました。

一時的な出家と還俗

永禄3年（1560年）には、一時的に仏門に入り、「禅昌」と号しましたが、同年11月には早くも還俗し、再び「當長（当長）」の名に戻っています。

上杉景虎（謙信）との関係

永禄4年（1561年）3月、関東管領上杉憲政が越後の長尾景虎（後の上杉謙信）に家督と関東管領職を譲渡しました。これを受け、当長は景虎から偏諱を受け、自身の祖父にあたる長尾景長と同じく「景長」と名乗ったと考えられています。その後、景虎が上杉政虎と改名し、本格的な関東出兵を開始すると、景長（当長）も同族である長尾氏の一員として、上杉勢を支援する立場となりました。

館林城代として

永禄5年（1562年）2月、上杉政虎率いる軍勢が、赤井氏の居城であった館林城を攻略しました。この城は同月末、景長（当長）に預けられることとなります。また、旧赤井氏の支配下にあった上野国邑楽郡は、景長と小泉城主であった富岡重朝によって二分統治されることになりました。この過程で、それまで赤井氏に従っていた現地の土豪たちも、長尾氏の統治体制に組み込まれていったとされます。

上杉・北条間の折衝役

上杉政虎（謙信）が後北条氏への圧力を強め、やがて越相同盟を結ぶに至る過程において、景長は上杉家と北条家という二大勢力の間の軍事・外交的な交渉や調整に携わる役割も担ったとされています。

最期と後継

永禄12年（1569年）7月15日、病のためか死去しました。享年43歳でした。法名は心通禅空大居士といい、菩提寺である心通院（現在の栃木県足利市）には、その宝篋印塔が残されています。

景長の死後、家督は婿養子の顕長が継承しました。一方、景長が預かっていた館林城は、別の婿である広田直繁に与えられたようです。また、男子として北条氏政から偏諱を受けたとされる長尾政長が存在したという記録もありますが、家督を顕長が継いでいることから、政長は早世した可能性が高いと考えられています。

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