長尾忠景

長尾忠景（ながお ただかげ）

室町時代後期の武将であり、惣社長尾氏の五代目惣領を務めました。関東管領山内上杉家の主要な家臣として重きをなし、その職務は筆頭家老である家宰や武蔵国の守護代に及びました。官職としては尾張守を称しています。

彼は白井長尾家を率いた長尾景仲の次男として生まれましたが、後に惣社長尾家の養子となりました。系図上では長尾景棟、あるいはその弟・良済の養子とされていますが、近年の研究では、彼らの父である長尾忠政（法号・芳伝）から直接家督を継承した可能性が指摘されています。特に「長林寺本長尾系図」には、忠景が「芳伝名代」と記されており、また忠景が文明5年（1473年）から同8年（1476年）頃に記したとされる書状には、芳伝から所領を継承して三十年ほど経過した旨が記されています。この記述に基づけば、忠政が存命中であった文安年間（1444年 - 1448年）には既に忠景が惣社長尾家を継承していたことになり、実子である景棟や良済に先立たれて後継者を失った忠政が、忠景を養子に迎えたと推測されています。

惣社長尾家の家督を継いだ後、忠景は山内上杉家において武蔵国守護代など、要職を歴任しその権勢を確立しました。一方、彼の実家である白井長尾家では、父・景仲が山内上杉家の執事に就任し、父の隠退後は兄の長尾景信がその後を継いでいました。

文明5年（1473年）、山内上杉家の執事であった兄・景信が世を去ると、当時の関東管領上杉顕定は、忠景を新たな山内家執事に任じました。この人事に対して、景信の子で忠景にとっては甥にあたる長尾景春が強い不満を抱き、時の古河公方足利成氏と手を結んで顕定に対し反乱を起こしました。これが世にいう「長尾景春の乱」の発端となります。

忠景は、主君である上杉顕定の陣営の主要な武将として、甥にあたる景春の反乱鎮圧のため各地を転戦しました。しかし、武蔵国の五十子の戦いでは顕定方が大敗を喫し、忠景自身も上野国へ逃れるなど、厳しい戦いを強いられました。長尾景春の乱が終息した後も、戦乱の時代は終わりませんでした。顕定率いる山内上杉家と、それまで協調関係にあった扇谷上杉家が対立する「長享の乱」が勃発したのです。忠景の本拠地である上野国においても、長野氏をはじめとする国人勢力が台頭し、複雑な情勢が展開されました。このように、忠景は晩年に至るまで戦いの渦中に身を置くこととなりました。

戦乱の合間には、文化的な活動にも関わっています。鎌倉にある円覚寺の塔頭、雲頂庵を再興したことが知られています。

文亀元年（1501年）閏6月29日、波乱に満ちた生涯を閉じました。法名は敬叟皎忠です。

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