長尾房景

長尾 房景（古志長尾氏）

戦国時代に越後国を治めた武将であり、古志長尾氏の当主として栖吉城を本拠とした人物、それが長尾房景（ながお ふさかげ）である。

幼少期に家督を継承したのは明応4年（1495年）12月のこと。父である長尾孝景から、まだ若いながらもその地位を譲られた。明応7年（1498年）5月には、越後守護の上杉房能が古志郡における郡司の不入権を撤廃するという措置をとった。これにより、古志郡は本来、郡司である古志長尾氏の支配権の下に置かれるはずであった。しかし、当時の守護代であった長尾能景は、房景の幼少を理由に、自身が郡内に持つ所領を古志長尾氏の管轄から除外するよう要求した。この頃、古志長尾氏の本拠地は蔵王堂城にあったが、この地は府内長尾氏の所領が多く存在する大島庄内にあり、支配の上で不便を感じていたのかもしれない。そのため、16世紀初頭には本拠地を栖吉へと移している。この移転の背景には、普済寺が所有していた栖吉および周辺地域を、同時期に古志長尾氏の所領として獲得できたという事情があった。

永正2年（1505年）から永正4年（1507年）にかけての間に元服を果たし、弥四郎房景と名乗るようになった。

永正4年（1507年）8月、守護代の長尾為景が反乱を起こし、守護・上杉房能を討ち、新たに上杉定実を守護として擁立した際、房景は為景に味方する姿勢を示した。その功により、定実から新たな所領を与えられるという恩賞を受けている。ところが、永正6年（1509年）に関東管領の上杉顕定が関東の軍勢を率いて越後へ侵攻すると、房景は今度は顕定側に寝返った。翌永正7年（1510年）6月6日には、為景方の拠点であった蔵王堂城を攻撃し、主要な人物を含む百余名を討ち取り、数百名を信濃川へと追い詰める戦果を挙げた。しかし同年8月には、勢いを盛り返した定実と為景によって越後国の平定が進められており、房景も蔵王堂での戦いの後、再び為景方へと立場を転じた。

これ以降は一貫して為景の側で戦い続けた。永正11年（1514年）に上田庄で守護方と行われた合戦では、七十人余りを討ち取る活躍を見せた。永正16年（1519年）から永正17年（1520年）にかけて行われた為景の越中国への進攻にも従い出陣したが、新庄の合戦では血縁者や家臣を多く失うなど、大きな犠牲も伴った。為景の求めに応じて各地を転戦するうちに、房景は次第に為景への従属を深めていった。一方で、自身も古志郡内の小領主たちの被官化（家臣化）を推し進め、加えて本拠地とした栖吉では城下町の整備にも力を入れた。

房景の没後、大永・享禄年間（1521年-1532年）以降の古志長尾氏の動向には不明な点が多い。しかし、現在上杉家文書として、房景以前の古志長尾氏に関連する多くの文書が伝わっていることから、天文12年（1543年）に長尾景虎（後の上杉謙信）が栃尾へ入部した出来事は、古志長尾氏の家督継承と解釈されている。

出典
栃尾市史編集委員会編 『栃尾市史 上巻』（1977年）
立教大学日本中世史研究会 「栖吉の里に中世を求めて」 『長岡市史研究』第2号（1991年）
* 吉川弘文館『戦国人名辞典』（栗原修執筆「長尾房景」の項）（2005年）

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