長尾景総

長尾景総（ながお かげふさ）

戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、上野国（現在の群馬県）を拠点とした高津長尾氏の出身です。総社長尾氏としては第10代、高津長尾氏としては第7代の当主とされます。上野国の蒼海城（惣社城）を居城としました。父は長尾顕景と伝えられています。

景総の家督継承には複雑な背景があります。兄である景孝から家督を譲られた時期については諸説ありますが、一般的には天文15年（1545年）とされています。しかし、それ以前の大永5年（1525年）には、すでに南関東に勢力を広げていた北条氏綱の下へ出奔していた記録があります。また、天文14年（1545年）の記録には、北条氏康の配下としてその名が見られます。これらの状況から、兄・景孝からの家督継承は、単なる円満な引き継ぎではなく、天文21年（1552年）に上野国の主要な戦国大名であった山内上杉家が没落した際、北条氏の家臣となっていた景総が、兄を退けて惣社長尾氏の当主の座に就いた可能性が指摘されています。

その後、永禄3年（1560年）に関東へ越後国の上杉謙信が進出してくると、景総は大きな転機を迎えます。自らの居城である蒼海城にいた北条方の軍勢を追い出し、謙信に従属することを決めました。謙信は景総を惣社長尾家の正当な当主として認め、彼に重要な役割を与えました。特に、碓氷郡や多胡郡、そしてその周辺地域の諸将と上杉謙信との間の連絡役（取次）を務めさせました。これにより、景総は上杉氏の関東支配における重要な窓口の一つとなります。

しかし、上杉氏に従ってからも、景総の立場は安定しませんでした。永禄9年（1566年）、甲斐国の武田信玄が上野国への本格的な侵攻を開始すると、景総は上杉方の他の武将である松本景繁らと共に武田軍を迎え撃ちました。ところが、この戦いの最中に、味方であるはずの北条高広が上杉氏から離反したため、景総らは孤立してしまいます。翌永禄10年（1567年）には、白井城（3月6日以前）と蒼海城（5月5日以前）が立て続けに武田氏の手に落ち、景総は所領の全てを失いました。居城を追われた景総は、兄弟の憲景と共に、遠く越後の上杉謙信の許へ逃れることになります。

越後へ逃れた後の景総は、永禄12年（1569年）に出家し、「長建」と号しました。晩年の消息については詳しいことはわかっていませんが、「惣社長尾系図」には、天正3年2月1日（1575年3月13日）に厩橋城（現在の群馬県前橋市にあった城）で没したとの記録が残されています。これは、所領を奪還するため、あるいは何らかの理由で上野国に一時的にでも戻っていた最中に亡くなった可能性を示唆しています。

なお、景総の次代の当主とされる長尾景秀（平太）については、「惣社長尾氏系図」では長尾顕方の子とされています。しかし、景秀の活躍した年代などから考えると、景総の子である可能性が高いと見られています。景総の生涯は、北条氏と上杉氏の間で揺れ動き、最終的には武田氏の侵攻によって所領を失うなど、戦国乱世の動乱を色濃く反映したものでした。

もう一度検索