長田幹彦

長田幹彦の生涯と業績

生い立ちと教育

長田 幹彦（1887年3月1日 - 1964年5月6日）は、日本の小説家および作詞家として知られています。彼は東京府麹町区飯田町で誕生し、兄に劇作家の長田秀雄を持っていました。1904年に東京高等師範学校附属中学校を卒業し、その後早稲田大学に進学しました。中学校時代から兄の影響を受け、新詩社の『明星』に参加するも後に脱退し、1909年から『スバル』に携わり始めました。

文学活動の開始

早稲田大学在学中、長田は各地での厳しい労働体験を得ましたが、これらの経験が文学創作の源泉となります。特に、1911年から翌年にかけて発表された小説「澪」と「零落」は高く評価され、長田は一躍人気作家となりました。しかし、1913年から1915年にかけて発表した「霧」「扇昇の話」「自殺者の手記」といった作品群では、同時期の谷崎潤一郎と共に耽美的な作風が評判を呼びました。

祇園とその影響

1912年には谷崎と親しく交遊するものの、次第に関係は疎遠に。この時期、祇園に滞在し、そこでの情緒や舞妓たちの宿命について描いた「祇園」「鴨川情話」「祇園情話」などの作品が生まれました。これにより、彼は情話作家として広く名を知られるようになりますが、同時に「遊蕩文学」として批判を受けることもありました。

文壇からの遠ざかり

その後、約300余りの長編と600を超える短編を手掛けるものの、文学界の主導権からはしだいに遠ざかっていきました。長田の作品は後に全集としても出版され、彼の文学の体系性が認識されることに繋がります。

ラジオドラマと作詞活動

大正から昭和にかけて、長田はラジオドラマにも関与し、1925年に設立された「ラジオドラマ研究会」では中心的な役割を果たしました。自身でも脚本を執筆し、声優の育成にも力を入れました。また、昭和の初期には日本ビクターで専属の作詞家として活動し、「祇園小唄」「島の娘」といった数多くの楽曲を手がけています。

戦争と戦後

1941年には内閣情報局の発禁処分の対象ともなり、彼の作品もその一つに名を連ねました。戦後は「青春時代」などの回想記や通俗小説の執筆に励むとともに心霊学にも興味を持ち、「超心理現象研究会」を主宰しました。1952年には著作『幽霊インタビュー』を出版しており、阿部定事件をテーマにした劇団も旗揚げしています。

最期と遺産

長田幹彦は1964年に東京で亡くなりますが、彼の文学や音楽への貢献は後世に多くの影響を与え続けています。その多才な活動により、日本文化の一端を担った重要な作家として今も名を知られています。

代表的な著作

長田の著作には、「旅役者」「祇園」「霧」「自殺者の手記」など多岐にわたる作品があり、特に祇園を舞台にした作品群は、彼の独特な視点と感受性を伝えています。また、ラジオドラマや多くの歌詞も今なお親しまれています。

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