長田秀雄

長田秀雄（ながた ひでお）

長田秀雄は、1885年（明治18年）5月13日に東京で生まれ、1949年（昭和24年）5月5日に没した詩人、小説家、そして劇作家です。彼の文学活動は、明治末期から昭和初期にかけての激動の時代を背景に展開されました。

生い立ちと初期の活動

長田秀雄は、獨協中学校を卒業後、明治大学で学びました。文壇でのデビューは、北原白秋や木下杢太郎らとともに『明星』の同人として詩作を発表したことから始まります。その後、「パンの会」や「スバル」といった文学活動にも参加し、詩人としての才能を開花させました。

劇作家としての転身

長田は、詩人としての活動と並行して、劇作家としてもその才能を発揮しました。初期の戯曲「歓楽の鬼」が自由劇場で上演されたことがきっかけとなり、新劇運動に積極的に関わるようになります。1920年（大正9年）には、大作「大仏開眼」を発表し、劇作家としての地位を確立しました。この作品は、長田が歴史劇の分野でも才能を発揮したことを示す代表作となりました。その後、彼は歌舞伎劇の史劇を数多く手がけ、日本の演劇界に大きな足跡を残しました。

新劇運動への貢献

長田は、新劇運動の推進にも尽力しました。1939年（昭和14年）に築地小劇場が会社組織となる際には、代表取締役に就任し、劇団運営の責任者として活躍しました。また、新協劇団（第一次）の代表者としても活動し、社会主義思想を背景にした演劇運動を展開しました。1936年（昭和11年）には、井上正夫が設立した井上演劇道場にも参加し、後進の育成にも力を注ぎました。

新協劇団解散と晩年

1940年（昭和15年）8月20日、長田は警視庁特高第一課に呼び出され、新協劇団の解散を強要されました。当時、社会主義思想は政府によって厳しく弾圧されており、新協劇団もその標的となったのです。長田は、この圧力に抗うことができず、同年8月22日、新協劇団は解散を決定しました。この事件は、当時の政治状況と演劇界の苦悩を象徴する出来事として知られています。長田秀雄の墓所は、染井霊園にあります。

家族と著作

長田の弟である長田幹彦も、詩人、小説家として活躍しました。長田秀雄の主な著作には、『歓楽の鬼』、『琴平丸』、『放火』、『飢渇』、『小説午前二時』、『声』、『大仏開眼』、『牡丹灯籠』、『愛憎篇』、『黒幕』、『現代戯曲選集 第1篇　石山開城記』、『昭和血士録』、『新劇の黎明』、『女優須磨子』などがあります。これらの作品は、彼の幅広い文学活動と、時代に対する深い洞察力を示しています。

長田秀雄は、詩人、小説家、劇作家として、多岐にわたる文学活動を通じて、日本の文化に大きく貢献した人物です。彼の作品は、今もなお多くの読者に愛され、研究対象となっています。

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