長谷川公一

長谷川 公一

長谷川 公一（はせがわ こういち）氏は、1954年に生まれた日本の社会学者です。環境社会学と社会運動論を専門とし、この分野における日本の第一人者として知られています。現在、盛岡大学および盛岡大学短期大学部の学長を務める傍ら、かつて長年教鞭を執った東北大学と尚煇学院大学からは名誉教授の称号を受けています。

経歴と学術的背景

山形県上山市で誕生した長谷川氏は、少年時代を最上町や尾花沢市で過ごしました。山形県立山形東高等学校を経て、東京大学文学部で学び、1977年に卒業。その後、東京大学大学院社会学研究科博士課程に進み、1983年に単位を取得して退学しました。研究を深め、2004年には論文提出により東京大学から博士（社会学）の学位を授与されています。

学術キャリアは、1983年に東京大学文学部助手として始まりました。翌1984年には東北大学に移籍し、教養部講師、助教授、文学部助教授を経て、1997年に文学部教授、2000年からは大学院文学研究科教授として活躍しました。2020年に東北大学を定年退職後、尚煇学院大学特任教授を務め、2025年4月からは盛岡大学・盛岡大学短期大学部の学長に就任予定です。この間、2004年にはアメリカのミネソタ大学で客員教授を務めるなど、国際的な研究交流も積極的に行いました。

研究と社会への貢献

長谷川氏の主要な研究テーマは、環境問題とそれに関連する社会運動です。環境社会学の確立と発展に貢献し、市民による環境運動が社会や政策にいかに影響を与えるか、そのメカニズムを社会学的な視点から分析しています。特に、原子力問題やエネルギー政策、地域開発に伴う環境問題などに深い関心を寄せています。

国内外の学会活動においても中心的な役割を担っています。2007年から2009年まで環境社会学会の会長を務め、専門分野の発展に尽力しました。また、国際社会学会（ISA）の理事を2018年から2023年まで務め、国際的な学術交流の推進に貢献しました。特に、2014年に日本で初開催された国際社会学会世界社会学会議（横浜大会）では、組織委員会委員長として大会の成功に多大な貢献をし、その功績によりクリスタル・アワォードを受賞しています。地域レベルでも、公益財団法人みやぎ・環境とくらし・ネットワーク（MELON）の理事長として、宮城県における環境保全活動や地域づくりを支援しています。

主な著作活動

長谷川氏は数多くの著作を通じて、その研究成果と社会への提言を行っています。代表的な単著としては、エネルギー政策に影響を与えた『脱原子力社会の選択』（新曜社、1996年）、社会運動論の古典として評価される『環境運動と新しい公共圏』（有斐閣、2003年）、原子力問題に焦点を当てた『脱原子力社会へ』（岩波新書、2011年）などがあります。2021年に刊行された『環境社会学入門』（ちくま新書）は、東北大学での最終講義をもとに、自身の学問的探求の道のりと環境社会学のエッセンスを分かりやすく解説したものです。英文単著_Constructing Civil Society in Japan: Voices of Environmental Movements_（Trans Pacific Press, 2004）は、日本財団が選定する「現代日本を理解する英文図書100冊」に選ばれるなど、国際的な評価も受けています。

共著、編著、共編著も多数に及び、新幹線公害、核燃料サイクル施設、震災からの復興、気候変動政策など、日本の現代社会が直面する重要な課題について、共同研究の成果を発表しています。

俳人としての顔

社会学者としてだけでなく、長谷川氏は俳句愛好家としても知られています。長谷川冬虹の俳号で創作活動を行い、2006年に第一句集『緑雨』（ふらんす堂）、2024年に第二句集『月の山』（青磁社）を刊行しています。俳句結社「古志」の同人としても活動しており、文学的な一面も持ち合わせています。

まとめ

長谷川公一氏は、環境社会学と社会運動論の分野において、教育、研究、社会活動、そして国際的な貢献と多方面で活躍する社会学者です。その知見は、現代社会が直面する環境問題や市民の役割を理解する上で、多くの示唆を与えています。今後の盛岡大学学長としての活動にも期待が寄せられています。

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