長谷川敬助

長谷川 敬助

長谷川 敬助（はせがわ けいすけ）は、嘉永3年7月28日（1850年9月4日）に生まれ、大正11年（1922年）7月16日に生涯を終えた、明治・大正期の多才な人物です。政治家、官僚、そして実業家として活動し、自由民権運動にも関与しました。

生い立ちと教育

武蔵国埼玉郡北河原村（現在の埼玉県行田市にあたる地域）にて、代々その地の名主を務める長谷川六左衛門の長男として誕生しました。1883年（明治16年）5月に家督を継いでいます。

若くして寺門静軒に学び、特に詩や書道に秀でていました。その文人的な素養は、敬堂または雨林という号にも表れています。

初期キャリアと自由民権運動

明治維新後、新しい時代の行政機構に関わるようになり、副戸長や学区取締、第十五区長といった役職を歴任しました。地方行政の基礎が固められる時期に貢献しています。

また、当時の思想潮流であった自由民権運動にも共鳴し、1875年（明治8年）には民権結社「七名社」の発足に関わりました。この組織において、会計責任者である出納幹事などを務めています。

埼玉県政での活動

1879年（明治12年）、当時の白根多助県令にその才を見出され、入間郡と高麗郡を管轄する郡長に任命されました。行政官としても手腕を発揮します。

翌1880年（明治13年）には埼玉県会議員に選出され、県政の中枢に関わるようになります。そして、当選翌年の1881年（明治14年）には、第3代の埼玉県会議長という要職に就き、さらに常置委員も務めました。

この時期、湯本義憲、中村孫兵衛、稲村貫一郎、石川欣一郎、坂本与惣次郎といった同時代の政治家たちと共に、埼玉県議会が創設されて間もない黎明期において、その運営と発展に指導的な役割を果たしました。

官僚としての復帰と実業界への転身

1882年（明治15年）に埼玉県会議員を辞した後、一時的に県政の表舞台から退きます。しかし、1884年（明治17年）には北埼玉郡長に就任し、再び官界に戻ります。続いて1885年（明治18年）には北足立郡と新座郡の郡長を務めますが、1886年（明治19年）にはこれらの職を辞しました。

その後間もなく、埼玉県庁の書記官に任命され、組織内の第二部長を務めるなど、県の行政実務において重要な役割を担いました。

1890年（明治23年）に書記官の職を辞すると、長谷川敬助は官界から離れ、実業界での活動に注力するようになります。金融分野に着目し、熊谷銀行や熊谷貯蓄銀行を設立し、その頭取を務めました。

さらに、1898年（明治31年）には埼玉農工銀行の設立に伴い、その初代頭取として迎えられ、この地位を1915年（大正4年）まで務めるなど、埼玉県の地域金融、産業振興に大きく貢献しました。

晩年と逝去

実業界での第一線から退いた後は、これまでの忙しさから解放され、趣味に没頭して穏やかな晩年を過ごしたと伝えられています。

1922年（大正11年）7月16日に死去。葬儀は故郷である北河原村で村葬として行われ、同地にある照岩寺に埋葬されました。

親族

長谷川敬助には、以下のような親族がいます。

• - 長男：長谷川 道也（東京控訴院判事を務めた）
• - 二男：長谷川 恭平（古河合名会社の技師を務め、妻は志方鍛三女）
• - 娘婿：内山 定一（長女そのの夫で、農事試験場の技師を務めた）

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