長野主膳

長野主膳の生涯と功績

長野主膳（ながの しゅぜん）は、江戸時代末期に活躍した国学者であり、大老井伊直弼の家中に仕えた人物です。彼の通称は初め主馬（しゅめ）で、後に主膳（しゅぜん）に改名されました。名は義言（よしとき）であり、桃之舎と号していました。

初期の経歴

長野主膳は伊勢国飯高郡滝村に住んでいた長野次郎祐の弟として生まれたとされていますが、実際の生い立ちや経歴は25歳になるまでほとんど知られていません。彼が歴史に名前を残すのは、天保10年（1839年）に滝野村に滞在してからです。1841年には、滝野村の次郎左衛門の妹である瀧女（たきめ）と結婚し、夫婦でその後の旅を開始しました。彼らは京都、伊勢、美濃、尾張、三河といった地を遊歴し、再び近江へも訪れました。

その後、長野主膳は志賀谷村に住む阿原忠之進宅で国史や和歌を教え、ここでの活動が後の彼の足掛かりとなります。また、酒宴の席では肥後弁を用いることがあったとされています。

天保13年（1842年）には、井伊直弼に出会い、弟子として迎えられました。主膳は美貌と和歌の才能を持ち、鋭い眼光で知られるようになります。彼の意思の強さや知識は、後に井伊直弼にとって欠かせない存在となっていきました。

藩政への貢献

井伊直弼が彦根藩主となると、主膳は藩校弘道館の国学方に任命され、藩政改革にも参加しました。1858年には、将軍後継者を巡る争いが発生すると、主膳は直弼の命を受けて京都に赴き、南紀派支持に向けた活動を行います。これが後の安政の大獄へとつながる出来事とされています。

主膳の影響力は大きく、直弼の政策がどのように進められたかにも大きく関与しました。しかし、彼は尊王攘夷派からの反発を受けることになり、自らの立場が危うくなります。主膳は当時の情勢を敏感に察知する一方で、直弼に対する忠誠心も持ち続けていたのです。

直弼の死後

安政7年（1860年）に直弼が暗殺された後、主膳は彦根藩の政務に参加しました。しかし、直弼の遺児である直憲からは疎まれ、家老の岡本半介との権力闘争に巻き込まれます。1862年には文久の改革が行われ、直憲の命で捕縛され、短期間で斬首されることとなりました。この事件は若い藩主による直弼を巡る政治的な動きを反映しています。彼は享年48であり、葬儀も禁止されたものの、後に彼の功績が認められ墓所が建立されました。

辞世の句

長野主膳はその最後に次の辞世の句を詠みました。

飛鳥川 昨日の淵は 今日の瀬と 変わるならひを 我が身にぞ見む

この句には、彼の人生の変化や時代の移ろいが表れており、多くの後世の歴史家に感銘を与えています。

文化的影響

主膳の子孫は明治以降「古城」または「広城」を名乗り、彼の業績は未だに記憶されています。また、彼に関連する文学やドラマも多く存在しており、彼の影響は歴史文化の中でも引き続き語られています。主膳の人生を描いた著作例として、石川淳の小説『狂風記』や高橋克彦の『火城』などがあります。これらの作品は、彼の存在感を強く示しています。

長野主膳は、井伊直弼の謀臣として知られ、その生涯や権力の中での立ち位置は、一層歴史的な意味を持つものとなっています。

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