長野電鉄8500系電車

長野電鉄8500系電車

長野電鉄8500系電車は、かつて東急電鉄で活躍していた8500系を譲り受け、長野電鉄の路線に合わせて一部改造を施した通勤形電車です。2005年（平成17年）に導入され、老朽化した2000系や3500系非冷房車の置き換え、そしてサービス向上に貢献しました。

概要

東急電鉄（当時）から購入した8500系は8両で、3両編成2本と部品取り用2両という構成でした。整備と改造を経て長野線（長野駅 - 信州中野駅間）で営業運転を開始し、長野電鉄の主力車両として活躍しました。これにより、3500系の一部編成と2000系の一部が引退しました。

構造

8500系は、長野電鉄にとって24年ぶりの20m級車両であり、39年ぶりの4扉車両でした。運転台には長野電鉄初のワンハンドル式主幹制御器が採用されています。また、界磁チョッパ制御方式も長野電鉄では初の導入でした。

導入に際して、行先表示器はLED式に交換され、車内には蛍光表示管式の旅客案内表示装置が各車両のドア上に千鳥配置で設置されました。ドアチャイムや車椅子スペースも設けられ、バリアフリー化にも配慮されています。ワンマン運転に対応するため、車内チャイム付き自動放送装置も搭載されました。

降雪地帯での運用を考慮し、客用ドアの凍結防止ヒーターや、ブレーキ性能低下を防ぐ耐雪ブレーキ装置が追加されました。長時間停車時の車内保温対策として、3/4ドアカット機構も採用されています。通常、地方鉄道に譲渡された回生ブレーキ装備車は使用停止となることが多いですが、8500系では回生ブレーキの失効速度を22km/hから25km/hに変更することで、その機能を維持しました。これに伴い、ブレーキシューはレジン製から鋳鉄製に変更されています。

外観は、細部の改造を除き、東急時代の面影を色濃く残しています。車体の帯の色は、一部編成で東急時代より暗い赤色に変更されていましたが、2023年1月の全般検査で東急時代の色に近い明るい赤色に戻され、現在は全編成が同様の色となっています。

なお、勾配用の抑速ブレーキは装備されていないため、急勾配が連続する信州中野駅 - 湯田中駅間には乗り入れることができません。そのため、1000系や2100系の代走には充当されません。

車内設備

2013年5月頃から、各編成の中間車両が弱冷房車に設定されました。

事故・トラブル

2017年10月24日には、T3編成が軽トラックと衝突して脱線する事故が発生しましたが、2018年1月20日に運用復帰しています。2020年12月17日には、T5編成が小河原踏切で自動車と衝突する事故が発生し、一時運用を離脱しましたが、後に復帰しています。この事故により、信州中野寄りの前面スカートが破損し、代替品が装備されるまで撤去されました。

増備計画の変更

当初は合計9本の増備が計画されていましたが、東急側が8500系をインドネシアのKRLジャボタベックへ譲渡したため、長野電鉄への導入は2009年3月19日の3両編成2本（6本目）が最後となりました。その後の計画変更により、新車の導入は2020年デビューの3000系によって行われることになりました。

編成表

■：界磁チョッパ装置・主回路制御器（1C8M）搭載
◇：長野方に菱形パンタグラフ搭載（T5編成以降はデハ8510形の信州中野方にも搭載）

長野電鉄では、8500系導入以降、運転台のある制御電動車を「デハ」、運転台のない中間電動車を「モハ」と呼称しています（形式称号改正による）。ただし、8500系には「モハ」は存在しません。

( )内は東急時代の車両番号
デハ8501 - 8503は、譲渡前と車両番号が同一
最後に導入されたT6編成の先頭車は中間車からの改造車で、ヘッドマーク装着台座が設置されており、イベント時などに使用
T1 - T3編成は、元東急5000系を譲り受けた2500系2600番台（3両編成）と編成番号が同一
T5編成のスカートは元々信州中野方にも装着されていたが、2020年12月17日の踏切事故以降、長野方面のみ装着
2019年5月31日から2023年6月9日まで、T2編成が鉄道むすめ「朝陽さくら」のラッピング列車として運行

今後の予定

信濃毎日新聞の報道によると、長野電鉄は2028年度までに通勤電車を3000系などの省電力車両に置き換える方針です。主要KPI（重要業績評価指標）では、省電力型の割合を20%から73%に引き上げる目標が設定されています。この目標を達成するため、8500系全編成が置き換え対象となる可能性が示唆されています。長野電鉄は、製造後20年程度で全長18m級、車体幅2800mm、2 - 3両編成への短編成化改造が容易な車両を希望していると報じられています。

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