長門川

長門川の詳細解説

長門川は、千葉県印西市と印旛郡栄町を流れる、利根川水系に属する一級河川です。この川は、利根川と北印旛沼を繋ぐ重要な役割を担っており、短い区間ながらも印旛沼水系全体の流域を抱え、治水において重要な役割を果たしています。特に印旛放水路と共に、印旛地域の水量を調節する上で欠かせない存在です。

地理

長門川は、北印旛沼の北岸を起点とし、旧長門川と合流しながら北へと流れます。旧長門川は、かつて北印旛沼から直接流れ出ていましたが、印旛沼の干拓によって北調低地排水路に接続される形となりました。長門川は、印西市と栄町の境界を流れ、蛇行しながら西へと進み、JR成田線や国道356号を越え、将監川と合流します。その後、栄町の市街地を横目に、二手に分流し、それぞれ印旛水門と印旛排水機場を経由して利根川に注ぎます。

長門川の本流は5,138m、旧長門川は2,920mで、どちらも全区間が一級河川に指定されています。

将監川

将監川は、かつて利根川の派川であり「枝利根川」とも呼ばれていました。1676年に新田開発のために開削され、印旛沼を利根川の遊水池とする役割を担っていましたが、1912年に利根川から締め切られ、現在は長門川にのみ接続しています。現在は河川としてよりも湖沼として扱われており、その周辺は「湖沼緑地」として親しまれています。

流域

長門川の流域は、以下の通りです。

長門川流路上：印西市、印旛郡栄町
印旛沼（印旛捷水路・中央排水路含む）：成田市、佐倉市、八千代市、印旛郡酒々井町
印旛沼支流域（鹿島川、高崎川、手繰川など）：富里市、八街市、四街道市、千葉市若葉区・緑区
印旛放水路流路上：千葉市花見川区、美浜区
印旛放水路支流域（神崎川、桑納川、勝田川など）：千葉市稲毛区、船橋市、習志野市、白井市、鎌ケ谷市

水量調節の仕組みと水質

長門川と印旛放水路を含む印旛沼の水量調節は、印旛排水機場、大和田排水機場、酒直揚水機場によって連動して行われます。印旛沼は高低差が少ないため、季節に応じて湖沼水の移動がありますが、通常は長門川を通じて利根川へ水が流出しています。利根川が増水した際には、印旛水門を閉鎖し逆流を防ぎ、必要に応じて排水機場を稼働させます。渇水時には、酒直揚水機場によって利根川から水を汲み上げ、水位を上昇させます。

長門川の水質は、放流時には印旛沼、揚水時には利根川の影響を受けますが、通常は印旛沼の水質が反映されます。印旛沼周辺は閉鎖性水域であり、自浄作用が低いため、水質汚濁が問題となっています。また、流域の下水道整備の遅れも水質悪化の一因です。長門川では、自然築堤や水生植物帯による水質回復を目指していますが、浄化施設は設置されていません。

治水

長門川は、古くから増水時に利根川から逆流する河川であり、流域ではたびたび洪水被害が発生していました。特に栄町布鎌地域や印西市埜原地域では、水塚と呼ばれる高台に避難場所が設けられていました。

水門設置と将監川締め切り

1780年の水害をきっかけに、印旛沼の開削計画が浮上し、長門川には水門が建設されることになりました。また、枝利根川（将監川）は利根川から締め切られる計画でしたが、1786年の大洪水により工事は中断されました。

明治期に入ると洪水が再び多発するようになり、1896年の大洪水は河川法制定のきっかけとなりました。これを受けて、1912年に将監川が利根川から締め切られ、1922年には長門川と利根川の合流地点に印旛水門が完成しました。これらの治水事業により、印旛沼流域での大洪水は減少しました。

印旛沼開発事業

大正期に効果を発揮した印旛水門でしたが、昭和13年の集中豪雨によって排水ポンプが破損し、再び水害が発生するようになりました。戦後、食糧増産のために印旛沼干拓事業が開始され、利水施設の整備が重視されました。1960年には印旛排水機場が竣工し、印旛沼周辺の水害は収束しました。その後、酒直水門や酒直排水機場、大和田排水機場が整備され、現在に至っています。

長門川水道企業団

長門川流域は、かつて海水に覆われていたため、地下水は生活用水に適していませんでした。そのため、住民は長門川の水を生活用水として利用していましたが、印旛沼の干拓によって水質が悪化しました。1960年に長門川簡易水道事務組合が設立され、1962年から水道水の供給が開始されました。その後、需要拡大や水質変化に対応するため、水源を長門川にも求め、簡易水道から上水道へと事業を切り替え、長門川水道企業団へと改組しました。1993年には、高度浄水処理施設を導入し、水質改善に取り組んでいます。

橋梁

長門川には、以下の橋梁が架かっています。

酒直水門管理橋
豊年橋
JR成田線長門川橋梁
長門橋 - 国道356号（利根水郷ライン）
ふじみ橋 - 国道356号（安食バイパス）
印旛排水機場・印旛水門
（旧長門川）和橋
（旧長門川）十五町歩橋
（将監川）布鎌大橋
* （将監川）甚兵衛橋 - 茨城県道・千葉県道68号美浦栄線

長門川は、その地理的な重要性から、治水、水質、生活用水供給など、多岐にわたる役割を担っている河川です。その歴史や役割を理解することで、より深く長門川の価値を認識できるでしょう。

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