長鯨丸

長鯨丸について

長鯨丸（ちょうげいまる）は、幕府海軍を経て日本海軍に所属した運送船である。その名前は「大きな鯨」を意味し、杜甫の詩「飲中八仙歌」の一節にも登場する。

この船は1864年（元治元年）にイギリス・グラスゴーで竣工され、イギリスの鉄製外輪汽船「DANBERTON」として建造された。造船はWilliam Denny and Brothersが担当した。幕府はこの船を1866年8月12日に横浜で購入し、価格は20万ドルに及んだ。その目的の一つは、急死した将軍徳川家茂の遺体を運ぶことであり、1866年9月2日に大阪を出航し、6日に江戸に到着した。

さらに、慶応4年（明治元年）4月11日には幕府艦船の処分が行われ、長鯨丸は静岡藩に譲渡された。舵を握った榎本艦隊に組み込まれると、函館に向かって出航したが、箱館戦争では新政府軍により捕獲された。6月12日には軍務官所管となり、その後11月10日に民部省へ移管された。しかし、その後の歴史では明治3年には大蔵省に移管され、汽船回漕会社に交付されることとなる。

1880年（明治13年）まで使用された後、船名は「萬里丸」に改名され、三菱会社で浮き倉庫（ハルク）として使用されることになった。混乱した時代を生き抜いたこの船は、明治3年1月に廻漕会社に属していたが、明治4年1月には廻漕取扱所へと継承された。さらに明治5年8月には日本国郵便蒸気船会社が設立され、同社の経営が悪化したことから、1875年6月には政府に買い上げられ、同年9月には三菱会社に譲渡された。この際、船は再び「萬里丸」と命名された。

1877年には帆船に改装され、1878年には庫船としての役割を果たすこととなった。しかし、その後の経歴は明確には伝わっていない。

要目

長鯨丸に関する要目については、文献によって異なるが、以下のように記載されている。

• - 『日本近世造船史 明治時代』: 伝えられる要目は右上表による。
• - 『日本海軍艦船名考』: 長さ41間4尺（約75.76m）、幅6間（約10.91m）、深さ3間4尺（約6.67m）。
• - 『日本海軍史』第7巻: 長さ77.6m、幅11.2m、吃水6.3m。

船長には相浦紀道（忠一郎）がついていた。彼の在任は明治2年7月20日（1869年8月27日）から明治3年（1870年）3月までであった。

長鯨丸は、日本初の近代的な運送船の一つとして、幕末から明治にかけての日本の海軍史に名を刻む特異な存在である。さまざまな使命を担って航海し、様々な変遷を経たこの船の歴史は、日本の海運業の発展を象徴するものでもある。このように、長鯨丸は日本海軍の初期に大きな役割を果たした歴史的な船であり、今後もその功績は伝えられていくことだろう。

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