閉鎖病棟 Closed Ward

概要

『閉鎖病棟 Closed Ward』（へいさびょうとう クローズド・ウォード）は、著者であり現役の精神科医である帚木蓬生が書き下ろした小説です。この作品の舞台は、精神科の閉鎖病棟となっており、患者たちのさまざまな思いを描く人間ドラマが展開されます。物語には、過去の苦しみを抱えながらも前向きに生きる人々が登場し、彼らの生活が中心となっています。

本作は、70年代や80年代に流行したような異常心理をテーマにしたミステリー作品とは一線を画し、神秘的な殺人事件を背景に患者たちの人間味に溢れた生活を描写しています。九州にある精神科病棟が舞台で、そこに集う患者たちの生活と、彼らが直面する事件の意外な結末が魅力的に描かれています。

受賞歴と映画化

この作品は、第8回山本周五郎賞を受賞しており、多くの評価を受けていることも特筆すべき点です。また、2001年と2019年に映画化され、その都度異なるキャストやアプローチで物語が映像化されました。

書誌情報

• - 単行本：新潮社より1994年4月発売（ISBN 4-10-331407-9）
• - 文庫本：新潮文庫より1997年4月25日発売（ISBN 978-4-10-128807-9）

2001年版映画

2001年に映画『いのちの海 Closed Ward』として映像化されたこの作品は、佐賀県鹿島市をロケ地とし、多くの著名な俳優が出演しています。主なキャストには、上良早紀、頭師佳孝、芦屋小雁などが名を連ねています。監督は福原進氏が務め、脚本は石堂淑朗と西村雄一郎が担当しました。

2019年版映画

2019年には、監督の平山秀幸が自ら脚本を書き上げて映画化しました。笑福亭鶴瓶が主役を演じ、物語の舞台設定が2006年から2008年に変更されています。この版では、長野県松本市で撮影が行われました。

出演者には、綾野剛、小松菜奈、坂東龍汰といった豪華な顔ぶれが揃っています。映画は2019年11月1日に『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』として全国公開されました。

作品のテーマ

本作は、ただのサスペンスに留まらず、精神科病棟における患者たちの生や思いを深く掘り下げており、彼らが直面する精神的な葛藤や人間関係も描かれています。患者一人ひとりの物語が交錯し、しばしば心を揺さぶるような感情的な瞬間が提供されます。読者は、彼らが生きる日々の中で感じる希望や苦悩に共感を覚えることでしょう。

精神医療の現場が持つ複雑さと、そこに集う人々の人間性を再認識させる本作は、ただのミステリーやサスペンスではなく、生命や存在の意義について考えさせられる物語であるといえるでしょう。

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