開南中学校 (旧制)

開南中学校

開南中学校は、1936年（昭和11年）に沖縄県真和志村（現在の那覇市樋川）に設立された、県内唯一の旧制私立中学校でした。創設者は志喜屋孝信で、彼は後に琉球大学の初代学長を務めました。校名は、白瀬矗が率いた日本初の南極探検隊の船「開南丸」に由来し、「日本の南を開拓する」という意が込められていました。

沿革

開校当初、開南中学校は沖縄の教育を担う重要な役割を果たしていましたが、太平洋戦争の激化とともにその運命は大きく変わります。1944年（昭和19年）には校舎が沖縄陸軍病院として接収され、十・十空襲で焼失。さらに、1945年（昭和20年）の沖縄戦では、教職員と生徒たちが学徒兵として動員され、多くの生徒が戦死しました。

終戦後、1947年（昭和22年）には、開南中学校の跡地に開南初等学校（現在の那覇市立開南小学校）が開校し、その名を受け継ぎました。開南小学校は1952年（昭和27年）に現在の場所に移転しましたが、開南という名前は地域に残り、その歴史を伝えています。

1971年（昭和46年）には、同窓生たちによって糸満市の平和創造の森公園内に「開南健児之塔」が建立され、教師と卒業生を含む279名の犠牲者の名前が刻まれました。この塔は、戦争で失われた命を悼み、平和への祈りを捧げる場となっています。

沖縄戦と開南中学校の学徒兵

沖縄戦では、沖縄県内の中等学校の生徒たちが学徒兵として動員されました。開南中学校の生徒も例外ではなく、4・5年生は「開南鉄血勤皇隊」として、2・3年生以下は「開南通信隊」として編成され、各部隊に配属されました。また、学校の張り紙を見て自ら入隊した生徒も多かったとされています。しかし、当時の記録が乏しく、正確な動員数や犠牲者数は不明とされてきました。

同窓生たちは、この「不明」という扱いに対して強く反発し、詳細な調査を求めてきました。1970年（昭和45年）頃には、沖縄遺族連合会に調査を依頼し、13歳の学徒も戦死していたことや、190名の犠牲者を「学徒」として扱ってほしいと主張しました。しかし、これらの主張は公的な記録には反映されませんでした。

1985年（昭和60年）の報道では、開南中学から62師団に動員された学生は62名で、そのうち50名が戦死したと報じられました。また、2019年（令和元年）には、厚生労働省が保管していた「学徒名簿」が公開され、開南中学校の学徒71名の名前、住所、所属部隊が明らかになりました。この名簿により、13歳で動員され戦死した生徒もいたことが改めて確認されました。この資料は、1955年以降の復員処理関連資料である可能性が指摘されています。

まとめ

開南中学校は、短い歴史の中で、沖縄の教育と戦争の悲劇を象徴する存在となりました。学校は戦火で失われましたが、その名は地域に残り、戦争の記憶と平和への願いを後世に伝えています。学徒たちの犠牲を無駄にしないためにも、この歴史を深く理解し、平和を追求していく必要があります。

脚注

開南健児の塔 - 公益財団法人沖縄県平和祈念財団

関連項目

沖縄戦 > 沖縄の学徒隊
* 旧制中等教育学校の一覧 (沖縄県)

もう一度検索