開封攻囲戦

開封攻囲戦：金朝滅亡への道程

1232年から1233年にかけて、モンゴル帝国は金朝の首都開封を包囲しました。この攻囲戦は、金朝滅亡の重要な転換点となり、数多くの悲劇と歴史的逸話を生み出しました。

背景：衰退する金朝とモンゴルの侵攻

チンギス・カン死後も勢力を保つモンゴル帝国は、オゴデイの新即位を機に金朝征服を大目標に掲げました。弱体化したとはいえ、金朝は黄河南岸に強固な防衛線を築いて抵抗を試みました。

1232年春、モンゴル軍は三つの軍に分かれて侵攻を開始。オゴデイ率いる中央軍が金軍主力と交戦する間、トルイ率いる右翼軍は南宋領を経由して開封に迫りました。三峰山の戦いで金軍が敗北すると、開封はモンゴル軍の包囲を受けることになります。

包囲戦：食糧不足と降伏交渉

トルイ軍とオゴデイ軍が合流した後、オゴデイとトルイはモンゴル高原へ帰還。スブタイ、グユク、テムデイ、タガチャルら四人の将軍が開封包囲の指揮を執りました。スブタイは経験豊富な名将として、遠征軍全体を統率したとされています。

開封は避難民であふれかえり、食糧不足は深刻化。人肉を食べる悲惨な状況に陥りました。モンゴル側は武力による征服のみならず、降伏を呼びかけました。金朝は一時的に停戦に応じ、人質の引き渡しを行いました。しかし、皇帝号の廃止という条件をめぐって交渉は難航しました。金朝の反逆行為によって、交渉は決裂。再び包囲が激化しました。

皇帝の脱出とクーデター

12月、金朝皇帝哀宗は側近と共に開封から脱出。城内は混乱に陥り、西部の守備指揮官崔立がクーデターを起こし、実権を握りました。しかし、開封の窮状は変わらず、崔立は1233年4月、金朝の皇族をモンゴル軍に引き渡し、開封は陥落しました。哀宗の脱出は、数百万の人口を抱える開封城においてわずかな出来事であり、大多数の官吏にとっては開封の陥落こそが亡国の現実でした。

逸話：文人たちの苦悩と選択

この包囲戦には、多くの文人が巻き込まれました。彼らの苦悩と選択は、歴史に刻まれています。

耶律善才の自殺： 金朝高官で、耶律楚材の兄である耶律善才は、モンゴルに降伏せず、開封に残り自害しました。哀宗の厚意にもかかわらず、彼は忠義を貫き通しました。

崔立立碑事件： クーデターを起こした崔立は、自らの功績をたたえる碑を建てさせようとしましたが、文人たちはこれを拒否。最終的に碑が建てられることはなく、この事件は、関与した文人たちに苦い経験を残しました。

孔元措らの助命： 元好問は耶律楚材に書簡を送り、孔元措ら文人の助命を嘆願しました。しかし、最近の研究では、耶律楚材の役割は従来考えられていたほど大きくなく、孔元措らを守ったのは、山東地方の有力者厳実であったことが示唆されています。

開封攻囲戦は、金朝の滅亡、そして人々の様々な苦悩と選択を描いた、悲劇的な歴史の転換点でした。この戦いを描いた多くの記録は、現代にいたるまで歴史家の研究対象となっています。

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