開拓使号客車

開拓使号客車：北海道鉄道黎明期の特別な車両

開拓使号客車は、1880年（明治13年）に開業した官営幌内鉄道で使用された、開拓使などの政府高官専用の特別な客車です。アメリカのハーラン・アンド・ホリングスワース社で製造されました。北海道の鉄道の歴史を語る上で欠かせない存在です。

特徴

開拓使号客車は、当時の最先端技術と快適性を追求した設計が特徴でした。

アメリカ式開放客室：中央通路とデッキを備え、開放的な空間を実現。
転換式クロスシート：座席の向きを変えることができ、グループでの利用にも対応。
充実した設備：飲料水タンク、洋式便所、ストーブを完備し、長距離移動でも快適に過ごせるように配慮。
ボギー車：曲線区間でも安定した走行が可能。
空気ブレーキ：当時最新の技術を採用し、安全性を向上。
木製の車体：台枠に至るまで木製で、台車にも一部木材が使用されています。温かみのある内装でした。
ミラー式自動連結器：本州ではネジ式鎖連結器が一般的でしたが、開拓使号客車を含む幌内鉄道では、アメリカで実用化されたミラー式自動連結器が採用されました。

経歴

開拓使号客車は、幌内鉄道開業時に用意された8両の客車の中で、最上級の車両として1両のみ製造されました。車両番号はなく、「開拓使」という名称が与えられました。

1881年（明治14年）8月には、明治天皇が北海道を行幸された際、お召し列車として使用されました。これは、開拓使号客車にとって非常に名誉な出来事でした。

1889年（明治22年）の幌内鉄道民営化に伴い、北海道炭礦鉄道に引き継がれました。その後、1906年（明治39年）に鉄道国有法により買収され、国有鉄道に籍を移しました。

1911年（明治44年）には、鉄道院の称号規程により、5010形（コトク5010）に改められました。1923年（大正12年）には、弁慶号機関車とともに、保存のため東京に送られ、大井工場内の御料車庫に保管されました。

1948年（昭和23年）には、交通博物館へ移されて一般公開されました。

保存

1961年（昭和36年）に鉄道記念物に指定されました。2007年（平成19年）からは、埼玉県さいたま市の鉄道博物館で保存・展示されています。

鉄道記念物に指定された当初は、表面が暗灰色に変色し、紋様も定かでなく、無数のひび割れが発生するなど、塗装表面の劣化が著しい状態でした。しかし、当時は現状を維持すべきとの意見が強く、ワニスの上塗りによって暫定的に塗装剥離を抑えていました。

1966年（昭和41年）には、博物館明治村に貸与される5号・6号御料車に続いて復元工事が実施され、翌年3月に完成しました。これにより、開拓使号客車は往時の美しい姿を取り戻し、現在に至っています。

鉄道博物館では、開拓使号客車を通して、北海道の鉄道黎明期の歴史と技術を学ぶことができます。

関連項目

北海道炭礦鉄道の客車

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