関東地方御用掛

関東地方御用掛とは

関東地方御用掛は、江戸幕府の役職の一つで、享保の改革期に設置されました。その主な役割は、関東周辺の農政を担当し、新田開発や治水灌漑といった事業を監督・実行することでした。

設置の背景

享保年間、幕府は深刻な財政難に直面していました。その解決策として、幕府領の耕地を拡大し、年貢米の増収を図る政策が推進されました。その一環として、享保7年（1722年）に日本橋に新田開発奨励の高札が立てられ、同年6月には、南町奉行の大岡忠相と北町奉行の中山時春が関東地方御用掛を兼任することとなりました。

大岡忠相の活躍

中山時春が後に職を辞したため、以降は大岡忠相が単独で関東地方御用掛を務めることとなりました。大岡の職務は多岐にわたり、支配所で発生した民事裁判の裁許も含まれていました。新田に関する訴訟などは「大岡番所」で行われました。また、青木昆陽が広めたサツマイモを関東に定着させるため、配下の役人たちに栽培を奨励しました。

大岡支配下の役人たち

大岡忠相は、関東地方御用掛としての職務を遂行するために、様々な人物を配下の役人として登用しました。その中には、幕臣だけでなく、浪人や宿場名主など多様な人材が含まれていました。特に、治水・灌漑に長けた「地方巧者」と呼ばれる人々が重用されました。

主な役人として、岩手藤左衛門信猶、荻原源八郎乗秀、小林平六、野村時右衛門、田中休愚右衛門喜古、蓑笠之助正高、田中休蔵喜乗、上坂安左衛門政形、川崎平右衛門定孝などが挙げられます。彼らは大岡を「御頭」と呼び、特に上坂安左衛門・蓑笠之助・田中喜乗の3人は「大岡支配下の三代官」として、大岡の腹心として活躍しました。

勘定所との関係

享保の改革では、勘定所の機構改革も行われました。農政・財政を担当する「勝手方」と公事・訴訟を担当する「公事方」の2つの部門が創設され、代官の異動も行われました。関東地方御用掛の設置も勘定所の制度改革の一環であり、通常は勘定奉行に属する代官を関東地方御用掛の直属とし、「老中 - 勘定所 - 代官」と「将軍 - 地方御用掛（町奉行＝大岡） - 代官」の2つの系統を設け、両者を競合させる形で運営しました。

年貢関係や会計・事務書類などは勘定所の支配・統制下にありましたが、予算の見積もりを大岡の部下と勘定所の役人がそれぞれ作成し、比較検討した上で決定したり、玉川上水普請費用の見積もりを比較して安価で出来栄えの良い工事をした者への報償を要求したりするなど、大岡が主導権を握る場面もありました。

武蔵野新田の開発

関東地方御用掛の主な活動地域は武蔵野新田でした。大岡は、新田開発方役人を任命し、新田における訴訟や出入、臨時の要件を扱わせました。しかし、新田場では年貢の滞納が続き、農民たちは厳しい取り立てに抵抗しました。その後、上坂政形が代官に就任し、資金の投入や検地を行うことで、新田の安定的な経営を目指しました。

関東地方御用掛の終焉

大岡忠相が地方御用掛の辞意を表明し、辞職が認められた後、配下の役人たちは勘定所の支配下に移りました。武蔵野新田は他の幕領と同様に勘定所支配となり、関東地方御用掛の役割は終わりを迎えました。

まとめ

関東地方御用掛は、享保の改革期における幕府の財政再建策の一環として設置された役職でした。大岡忠相を中心とする役人たちが、新田開発や治水灌漑などの事業を推進し、関東地方の農政に大きな影響を与えました。勘定所との関係や武蔵野新田の開発など、その活動は多岐にわたり、江戸幕府の歴史において重要な役割を果たしました。

もう一度検索