閻浮提

閻浮提（えんぶだい）について

閻浮提（えんぶだい）は、古代インドにおける世界観の一部として位置づけられる大陸であり、主に人間の居住地とされています。この概念はサンスクリット語で「ジャンブドヴィーパ」と呼ばれ、直訳すると「ジャンブ（ムラサキフトモモ）の島」を意味します。さまざまな宗教的解釈によって、その詳細は異なりますが、共通して迷える人々の文化的・精神的背景を反映しています。

世界観の構造

古代インドの伝説において、閻浮提は須弥山の周囲に存在する四つの大陸の一つとして描かれています。『マハーバーラタ』の記述によると、メール山を中心に四つの島が配置されており、閻浮提はその中でも重要な存在です。メール山の周囲に広がる6つの山脈が、地理的に世界を南北7つのヴァルシャに分割し、この内の最南に位置するのがバーラタヴァルシャ、すなわちインド亜大陸です。

プラーナ文献でも、メール山の周囲に存在する島々について言及されており、一説では同心円状に配置された島の最内側に閻浮提が位置しているとされています。これは、インドの地理的特性を基にした象徴的な表現と解釈できます。

ジャイナ教における理解

また、ジャイナ教の世界観においても閻浮提は中心的な役割を果たします。彼らは世界を下界、中界、上界の三つに分け、中界の中心にメール山が位置し、その周囲を15の島が取り囲むという構造を持っています。この中で閻浮提は中央に位置しており、東西に走る6つの山脈により、南北に7つの黄帯（クシェートラ）として分けられ、特に南端のものをバーラタ・クシェートラと呼んでいます。

仏教における閻浮提

仏教では、閻浮提は四大洲の一つとして位置づけられ、南方にある三角形の大陸として認識されています。玄奘以後の翻訳では「贍部洲（せんぶしゅう）」とされることが多く、その位置から「南閻浮提（なんえんぶだい）」とも称されています。閻浮提には大きな森が広がっており、その中心には「閻浮（Jambu）」樹と呼ばれる大木が存在します。この樹は常緑で、土地の象徴ともなっていると言われています。なお、この閻浮提の概念は、後に私たちが住む現世を示す意味でも用いられるようになりました。

地理的な特徴

閻浮提の地理的な特性として、雪山（ヒマヴァット）の頂に位置する「アナヴァタプタ」と呼ばれる池とその周囲を流れる大川が挙げられます。これらの要素は、古代インドの自然環境を反映し、多くの神話や物語の舞台ともなっています。議論の中で、閻浮提はしばしばバーラタヴァルシャと同一視されることもありますが、実際にはそれぞれ異なる意味合いを持つことに注意が必要です。

他の大陸との関係

閻浮提の周囲には他にもいくつかの大陸が存在し、東には「ヴィデーハ」、西には「ゴーダーニーヤ」、北には「クル」が位置しています。これらの大陸は、それぞれ独自のキャラクターと役割を持ち、インドの文化や宗教における信仰システムに深く根ざしています。

以上のように、閻浮提は単なる地理的な概念ではなく、古代インドの宗教的・文化的な世界構造を理解するための重要な鍵となっています。その構造や象徴的な意味は、多くの信仰において今なお語り継がれています。

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