闇狩人

『闇狩人』シリーズ

漫画家・坂口いくによる日本のストーリー漫画『闇狩人』は、法によって裁かれ得ない悪人たちを、被害者や遺族の依頼に基づき、人知れず葬り去る「闇狩人」たちの暗躍を描くピカレスクロマンです。本作を起点として展開される一連のシリーズ作品の総称としても用いられます。テレビ時代劇『必殺シリーズ』に強い影響と敬意を払い、そのコンセプトを現代劇として漫画に昇華させた側面を持ちます。本記事では、初代『闇狩人』に加え、続編や外伝など、この世界観を共有する関連作品群についても解説します。

闇狩人とは

闇狩人は、法で裁くことのできない者に対する復讐や制裁を請け負う「殺人代行者」です。その存在は古くから形を変えて語り継がれており、現代社会においては都市伝説のように扱われることもあります。依頼の報酬は様々で、金銭を重視する者もいれば、恨みの正当性や被害者の無念を重んじる者もいます。彼らの多くは組織に属さず、単独で依頼を受けるスタイルを取っています。そのため、闇狩人同士の間でも立場や主義の違いから対立したり、場合によっては殺し合うこともあります。ただし、「筋の通らない依頼は受けない」という共通の不文律が存在し、この基準に基づいて依頼の可否を判断します。また、闇狩りの稼業はあくまで副業として行われ、別に本業を持つ者がほとんどです。現場で顔を見られた一般の目撃者は、仲間や依頼者を守るという掟のために始末する必要があります。現代では、秘話性を高めるために公衆電話を利用したり、近くにいても携帯電話で連絡を取り合うなどの工夫が見られます。

主要作品

『闇狩人』
シリーズの原点となる作品で、『月刊少年ジャンプ』（集英社）にて1987年12月号に読み切りとして掲載後、1988年2月号から1990年3月号まで連載されました。当初の読みは「ダークハンター」でしたが、連載開始に伴い「やみかりうど」に変更されました。作者の坂口いくにとって初の連載作品です。バブル景気や受験戦争、家庭崩壊といった当時の社会情勢を背景に、表向きは高校生、裏では闇狩人として活動する間武士を中心に描かれますが、連載が進むにつれて他の闇狩人も登場する半群像劇へと展開しました。連載終了後も、本編のその後を描いた『闇狩人 家族の肖像』や、別の闇狩人を主人公とする『闇狩人 -蛍-』、幕末を舞台にした『無名の剣』といった外伝が発表されています。単行本はジャンプ・コミックス版（全6巻）とホーム社からの復刻版（全5巻）が存在し、復刻版では加筆修正が行われています。2016年には舞台化も実現しました。また、後のシリーズに先行して、ウェブコミックサイト『Z』にて加筆修正された『闇狩人 SELECTION 最終改訂版』が配信され、一部エピソードがオールカラー化されたデジタル版も刊行されています。シリーズを通じて話数表記は「ACT 〇〇」形式が用いられています。

『闇狩人異伝 -Dの軌跡-』
『月刊少年ジャンプ』増刊号『ジャンプオリジナル』にて、1994年から1995年にかけて3回掲載された単発シリーズ。幼少期の事故でPTSDを抱え、人との関わりを拒絶する高校生、飛高大悟を主人公とします。彼の闇の世界への関わりと、本編にも登場する我竜京介との出会いが描かれました。単行本には宮沢賢治の詩が引用されています。

『新 闇狩人』／『闇狩人⊿』
『Dの軌跡』から約20年の時を経て発表されたシリーズ。現実の経過と同様に、初代『闇狩人』から20年以上後の混迷する現代を舞台としています。女子高生の闇狩人、士堂瑠璃の活躍を中心に、旧シリーズの登場人物も主要キャラクターとして関わる、実質的な続編にあたります。まず『新 闇狩人』として『月刊ビッグガンガン』（スクウェア・エニックス）にて2016年4月号から2017年7月号まで連載され、全3巻が刊行されました。この作品では坂口いくが原作を担当し、作画は細川真義が手掛けています。その後、物語はウェブコミックサイト『Z』（ホーム社）に移籍し、2017年9月から2021年3月まで『闇狩人⊿』として配信されました。単行本はホーム社から刊行されています。主人公の瑠璃と作画は『新』から引き継がれ、連続した物語が描かれています。このシリーズでは、本編の他にページ数の少ない「ACT 〇.5」といったエピソードが追加されています。

『我竜京介 PUBLIC FILE』
『闇狩人』シリーズの登場人物である我竜京介を主人公とした外伝作品。彼の「表の顔」であるトレジャーハンターとしての活躍を描きます。1993年にフロム出版から刊行され、後に東京三世社にレーベル移管されました。京介が、歴史の真実や古代の遺産を巡る陰謀と戦う姿が描かれています。

主要登場人物（抜粋）

間 武士（はざま たけし）: 初代『闇狩人』の主人公。普段は冴えない高校生（後に漫画家）ですが、裏では凄腕の闇狩人として活動します。ステンレス製の定規や丸ペンを武器とします。闇の仕事にも情を見せることがあり、貧乏暮らし。後の『新』『⊿』にも登場し、瑠璃と関わります。
我竜 京介（がりゅう きょうすけ）: 初代『闇狩人』に登場。けん玉を武器とする闇狩人で、表向きはトレジャーハンター。唯我独尊の色男ですが、金銭に細かい一面も。『Dの軌跡』や『闇狩人⊿』、そして自身の外伝『PUBLIC FILE』でも活躍します。
陣内 力（じんない ちから）: 初代『闇狩人』に登場。鬼神流空手の達人で、素手や手拭いを武器とする闇狩人。壮絶な過去を持ち、善良すぎるがゆえに周囲から危険視されることも。本編最終章で命を落としますが、『闇狩人⊿』にて回想でその存在が語られます。
三枝 将（さえぐさ しょう）: 初代『闇狩人』に登場。人気歌手でありながら、鋼鉄カッターのギターピックを武器とする闇狩人。芸能界での依頼を中心に活動します。一度引退するも復帰し、『新 闇狩人』にも登場します。
士堂 瑠璃（しどう るり）: 『新 闇狩人』『闇狩人⊿』の主人公。普段は漫画家志望の女子高生。兄の仕事に巻き込まれたことをきっかけに闇狩人となります。カラス口を加工した独特な武器を用います。間武士のアシスタントでもあり、彼のファンです。
駿河 修（するが しゅう）: 『新 闇狩人』『闇狩人⊿』に登場。元ボクサー志望で、故郷の裏の掟を継ぐ者。素手やマイナスドライバーを武器とする闇狩人。善意からこの道に入り、陣内力と似た生き様を持つと言われます。末期癌を患っているという過酷な運命を背負っています。
秋月 智（あきづき さとる）: 『新 闇狩人』『闇狩人⊿』に登場する「つなぎ屋（情報屋）」であり、弁護士。元検事という異色の経歴を持ちます。瑠璃の闇狩人としての後見人のような存在です。
美崎 ユキエ（みさき ユキエ）: 初代『闇狩人』の一般人キャラクターで、間の下宿先の娘であり同級生。元スケ番で正義感が強い。後の『新』『⊿』では、瑠璃や間が通う高校の教師として登場します。

他にも、将棋一派、応仁寺関係者、皇コンツェルンといった敵対組織の人物や、外伝・続編で重要な役割を担う人物などが多数登場し、物語を彩っています。

メディア展開

2016年には、初代『闇狩人』をベースにした舞台が上演されました。また、ウェブコミックサイト『Z』での『闇狩人⊿』連載に合わせて、声優による生アフレコと漫画の動画上映を組み合わせたライブリーディングイベント「ことだま屋本舗EXステージ『ことだま屋×Z』」が2018年、2019年、2021年に開催されています。

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