阪倉篤義

阪倉篤義：上代日本語研究の巨匠とその多様な貢献

阪倉篤義（1917年5月23日-1994年10月22日）は、日本の国文学者、国語学者として、その名を歴史に刻んだ人物です。京都帝国大学（現・京都大学）文学部国文科を卒業後、戦時中は兵役を経て、戦後は京都大学教養部助教授、教授を歴任し、1981年には同大学を定年退官、名誉教授となりました。その後は、甲南女子大学教授を務めました。1991年には勲三等旭日中綬章を受章。晩年は、新村出記念財団理事長として活躍しました。

幅広い研究領域と「語構成論」への貢献

阪倉博士の研究領域は多岐に渡りますが、中心は上代日本語の語彙論と文法論でした。中でも特に注目すべきは、「語がどのように構成されるか」という点です。彼は、語の構成は恣意的ではなく、厳格な法則に従うと主張し、「語構成論」という概念を確立しました。

当時、音義説などの従来の考え方に捉われない、大胆かつ独創的なアプローチで上代日本語の語構成を分析。その緻密で論理的な研究方法は、日本の国語学に大きな影響を与えました。平安時代の係助詞「なむ」の研究なども、この語構成論に基づいたものです。

国文学への貢献と国語辞典編集への参画

国語学のみならず、国文学の分野でも顕著な業績を残しています。『竹取物語』や『夜半の寝覚』など、古典文学の校訂・注釈にも携わり、その学識の高さを示しました。

また、国語辞典の監修者としても広く知られています。特に、『広辞苑』第三版および第四版の刊行に際しては序文を執筆するなど、その編集に大きく貢献しました。他にも、数多くの国語辞典や辞書類の監修に関わっています。

学界への貢献と人物像

学術団体への貢献も多大です。日本学術会議専門委員、国語審議会委員、国立国語研究所評議員、国文学研究資料館評議員、国語学会代表理事などを歴任しました。これらの活動を通して、日本の国語学の発展に尽力しました。

阪倉博士は、厳格な研究姿勢を持ちながらも、温厚で人望の厚い人物として知られていました。彼の葬儀では、第三高等学校寮歌が奏でられたという逸話は、その人となりを象徴するエピソードと言えるでしょう。

主要な著作

阪倉博士は数多くの著作を発表しました。代表的なものとしては、『日本文法の話』、『語構成の研究』、『日本語の語源』などがあります。これらは現在も国語学研究の重要な参考文献として広く用いられています。また、古典文学の校注・翻訳にも多くの業績を残しています。

まとめ

阪倉篤義博士は、上代日本語研究におけるパイオニアとして、その功績は計り知れません。語構成論の確立、古典文学研究への貢献、そして国語辞典編集への参画など、多方面で日本の国語学と国文学の発展に多大な影響を与えました。彼の研究は、現代の言語研究にとっても重要な指針であり続けています。彼の功績は、これからも日本の言語文化研究を支え続けるでしょう。

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