阪堺電鉄

阪堺電鉄株式会社：大阪湾沿岸を走った軌道線の歴史

1927年10月1日、阪堺電鉄株式会社は芦原橋駅と浜寺駅を結ぶ軌道線を開業しました。しかし、その歴史は決して平坦なものではありませんでした。

開業と厳しい競争環境

既に南海鉄道阪堺線が同じ地域を走っていたため、阪堺電鉄は「新阪堺」と呼ばれていました。大阪湾沿岸という過疎地域を運行したため、旅客数は伸び悩み、南海本線の存在も大きな競争相手となりました。さらに、度重なる風水害も経営を圧迫しました。

設立から開業まで

阪堺電鉄の前身は、木津川土地運河株式会社社長、高倉為三による港南電車軌道計画でした。投機目的で計画されたものでしたが、高倉為三の失脚後、土地会社が主要株主となり、1923年に阪堺電鉄として設立されました。芦原橋から浜寺までの路線は段階的に開通していき、1935年に全線開業を果たしました。

経営難と宅地開発

南海本線や高野線、南海軌道線との競争、沿線の過疎化、室戸台風による甚大な被害など、経営は常に苦難の連続でした。そこで、箕面有馬電気軌道（現在の阪急電鉄）の小林一三の経営手法にならい、沿線で宅地開発を行うことで経営の立て直しを図りました。1938年には本社を住吉区浜口町に移転しました。

戦時体制と大阪市への買収

日中戦争勃発後は、沿線の造船所や軍需工場の活況により旅客輸送量は増加し、経営は好転しました。しかし、車両不足や乗務員の戦地召集などにより輸送力は低下し、大阪市警本部から輸送業務改善命令が出されました。

改善策として大阪市電との連絡線を設置し、車両を借用するなど対応しましたが、根本的な解決には至りませんでした。最終的に、大阪府と運輸通信省は大阪市による買収を推奨し、1944年3月27日、阪堺電鉄は大阪市に買収されました。

大阪市電阪堺線とその後

阪堺電鉄の軌道事業は、大阪市電阪堺線（三宝線）として1968年まで運行されました。その後、廃止された路線の代替として、地下鉄四つ橋線が延伸開業しました。

路線概要

起点：芦原橋駅
終点：浜寺駅
駅数：26駅（1944年3月27日当時）
軌間：1435mm
電化区間：芦原橋 - 浜寺間

年表

1922年：軌道特許状下付
1923年：阪堺電鉄株式会社設立
1925年：軌道敷設工事着工
1927年：芦原橋 - 三宝車庫前間開業
1929年：段階的に路線延伸
1934年：室戸台風被害
1935年：全線開業
1938年：本社移転
1940年頃：初配当
1943年：輸送業務改善命令
1944年：大阪市に買収、会社解散

路線ルートと駅一覧

阪堺電鉄の路線は、南海本線西側に敷設され、大阪府道29号大阪臨海線、国道26号、大阪府道204号堺阪南線に沿って走行していました。駅一覧は1944年3月27日時点のものです。

輸送・収支実績

詳細なデータは、鉄道統計資料を参照してください。

特記事項

湊ノ浜 - 浜寺間は大阪市電阪堺線として運行されず、買収と同時に休止、後に廃止されました。現在も、芦原橋駅周辺や北加賀屋間に当時の架線柱などが残っています。

まとめ

阪堺電鉄は、競争と災害、そして戦時体制という厳しい環境の中で、独自の軌跡を描きました。その歴史は、日本の地方鉄道の歩みを知る上で重要な資料と言えるでしょう。 また、大阪市電阪堺線への移行や地下鉄四つ橋線の延伸開業といった後世への影響も無視できません。

もう一度検索