阪急380形電車

阪急380形電車の歴史と特徴

阪急380形電車（はんきゅう380がたでんしゃ）は、かつて阪神急行電鉄および京阪神急行電鉄（現在の阪急電鉄）に在籍した、小型の通勤形電車です。この形式は、宝塚線に先行して導入された320形の増備車として1936年に登場しました。当初、6両が製造され、その後の運用に寄与しました。

製造とデザイン

380形は1936年10月に川崎車輌により製造され、形式番号は380から385まで付与されました。基本デザインは320形を継承しているものの、車体および搭載機器においては大きな違いがあり、新しい形式として380形となりました。当時、神戸線では920系のTcが950形を名乗るなど、阪急独自の付番ルールが確立されていましたが、380形の番号が80代にあたる理由は明確ではありません。

車体の構造

320形を基にした軽量の全鋼製車体が特徴で、車幅は320形よりも50mm広い2400mmに設計されています。電気溶接によって、屋根を除くリベットレスの構造が実現され、スマートな外観を持ちました。側面窓の配置はd1(1)D6D(1)1dであり、前面には2つの運転台を配し、運転台側の幕板部には行先表示幕を配置しました。重量は20.4tで、320形よりも約1.3t軽量化されています。屋根構造も改良され、片側式のガーランド通風器を4基配置する形に変更されました。座席はロングシートが用いられ、袖仕切はパイプ式に変更されました。

機器と性能

台車には住友金属工業製のKS-33系（H-44）が使用され、軸受にはスウェーデンSKF社製のローラーベアリングが採用されました。主電動機は、300形から転用されたGE-240Aと、芝浦製造のSE-121Eの2種がありました。定格出力は82kWで、橋梁の荷重負担能力に配慮して1両あたり2基を搭載しました。駆動方式は吊り掛け式で、制御器は電空カム軸式が使用されました。ブレーキはAMM自動空気ブレーキが導入され、320形とは異なる性能を持っていました。

運用と改造

380形は宝塚線や箕面線での運用を開始し、320形に比べて出力が向上しましたが、主電動機の数が減少したため、実際のパフォーマンスには限界がありました。1939年には灯火管制工事が施され、1943年には500形の増備車と編成を組む例もありました。第二次世界大戦を経ても大きな損傷を受けることなく、戦後は灯火管制フードが撤去されるなどの改造が行われました。1950年代には、アメリカ博覧会に向けたPR塗装も施されました。

610系への改造と運用終了

1954年からの610系への機器流用が行われ、380形は今津線に転出し、320形編成の中に組み込まれました。この時期、本形式は小型車両の主力として運用されていましたが、徐々に小型車両の運行が常態化していったため、宝塚線に戻されました。再電装が整えられた後、再び今津線や甲陽線での運用が行われました。

最後の運命

3600系が導入されたことで、380形は業務を終了し、1966年には能勢電気軌道に移籍しました。後に、唯一の生き残りである383号は、1985年まで使用され、その後廃車されました。これにより、380形は阪急電鉄の歴史の中で一時代を築いた形となりました。

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