ダイレクト向かい飛車

ダイレクト向かい飛車：角交換を前提とした力戦振り飛車の進化形

ダイレクト向かい飛車は、将棋における振り飛車戦法の一種です。その名の通り、飛車を初期位置から直接2筋に振り、角交換も辞さない、力戦を挑むスタイルが特徴です。2011年頃からプロ棋士の間で採用例が増え始め、2013年には一大ブームを巻き起こしました。

従来の向かい飛車との違い

従来の向かい飛車も飛車を8筋から2筋に振る戦法ですが、ダイレクト向かい飛車との決定的な違いは、飛車の移動経路にあります。従来の戦法では、角交換型四間飛車への対策として、一度4筋に飛車を振る「途中下車」がありました。これは、居飛車側の強力な反撃手段である▲6五角（後手番なら△4五角）を防ぐためです。しかし、ダイレクト向かい飛車は、この4筋への「途中下車」を省略し、初期位置から直接2筋に飛車を振ります。この「ダイレクト」な動きが、本戦法の大きな特徴であり、名前の由来となっています。

誕生の背景：振り飛車戦法の変革期

ダイレクト向かい飛車の登場は、将棋界における振り飛車戦法の変遷と深く関わっています。左美濃や居飛車穴熊といった居飛車側の堅い戦法の台頭により、一時衰退傾向にあった振り飛車戦法ですが、藤井システムやゴキゲン中飛車の出現によって再び脚光を浴びるようになりました。しかし、居飛車側の対策が進むにつれて、従来の角道を止める振り飛車（四間飛車など）の有効性も低下していきました。

この状況下で、角道をあけたまま戦う力戦振り飛車が注目を集め始めます。升田式石田流や立石流四間飛車などもその流れの一つですが、ゴキゲン中飛車の登場が、角道を止めない振り飛車の普及に拍車をかけました。

しかし、角道をあけたまま戦う力戦振り飛車には、居飛車側の▲6五角（後手番の場合）への対策が課題として残りました。当初は、一度四間飛車に振ってから向かい飛車に振り直す「二手損向かい飛車」が考案されましたが、2手損の不利が抵抗感となり、広く普及するまでには至りませんでした。

そこで、佐藤康光らによって考案されたのが、ダイレクト向かい飛車です。角交換を前提とし、▲6五角への対策をせずに、初期位置から直接2筋に飛車を振るこの戦法は、角交換後の複雑な局面を戦い抜く力強さが魅力です。▲6五角に対しては△7四角と切り返すことで、互角以上の戦いを実現できるとされています。

戦術：角交換後の複雑な局面

ダイレクト向かい飛車の大きな特徴は、角交換後の局面の複雑さです。▲6五角△7四角と角交換した後も、▲4三角成や他の手段を用いて、激しい攻防が繰り広げられます。△5二金右や△4二金といった、馬を防衛する手段が重要となります。また、▲7五歩やその他の手段を用いて、先手も反撃の機会を伺います。

著名な棋士による活用

大石直嗣八段はダイレクト向かい飛車の使い手として知られ、2013年にはNHK杯テレビ[[将棋トーナメント]]でベスト4に入るなど、好成績を収めました。佐藤康光九段も、本戦法を駆使して多くの勝利を収めています。

都成流ダイレクト向かい飛車

都成竜馬七段は、４手目９四歩戦法に工夫を加えた独自のダイレクト向かい飛車を開発しています。この戦法では、△４四歩と歩を突くことで、飛車を振った後の▲６五角に対して、△７四角と合わせて▲４三角成を△５八金で受け、４三の歩を保持する工夫が凝らされています。

まとめ

ダイレクト向かい飛車は、角交換を前提とした力戦型の振り飛車戦法として、現代将棋において重要な戦法の一つです。そのダイレクトな飛車の振り方、そして角交換後の複雑な局面は、多くの棋士を魅了し続けています。今後も、その戦術や展開は進化を続け、将棋界を盛り上げていくことでしょう。

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