阪神201・202形電車

阪神201・202形電車は、阪神電気鉄道がかつて所有していた事業用電動貨車です。旧型の小型車を改造した151形各形式の老朽化に伴い、1980年代半ばに製造されました。廃車となった初期の高性能車の電装品を流用し、新造の車体を組み合わせたのが特徴です。同時期に製造された救援車の110形も存在します。

概要

201・202形は、小型車の1121・1141形を改造した吊り掛け駆動車である151・154号を代替する目的で製造されました。1986年に201号と202号の2両が武庫川車両工業で製造されています。無蓋式の電動貨車として、保線作業や資材運搬に活躍しました。

車体

車体長は17.8m、車体幅は2.74mで、荷台の最大積載荷重は15tです。201号の大阪梅田側と202号の神戸三宮側に全室運転台と作業員用の座席が設けられ、反対側は半室のボックス型運転台となっています。全室運転台側には、新品の下枠交差式パンタグラフが搭載されました。202号の荷台には2t電動ホイストが大阪側と神戸側に1台ずつ装備されています。

尾灯は全室運転台側は腰部に、半室運転台側は台枠部分に設置されています。前照灯は双方の運転台とも森尾電機製の16粒小型LED2灯です。荷台側面には、大型資材積載時の落下防止用の側板設置用ステーが設けられており、必要に応じて側板がはめ込まれます。

主要機器

台車は、1986年4月に廃車となった3302・3303から流用された住友金属工業製FS-206を装着しています。駆動方式は直角カルダン駆動、主電動機は1時間定格出力60kWの東芝製SE-516、制御方式は抵抗制御、主制御器は3521形の3000系への改造に伴う発生品を改造したABFM-64-15-MA改、ブレーキ装置はHSC電磁直通ブレーキです。

補助機器として、電動発電機（MG）はMG-207-S、空気圧縮機（CP）はM-20-Dを搭載しています。連結器はバンドン式密着連結器で、連結器の上には工事車両牽引用の棒連結器の受けが取り付けられています。

運用と改造

主に保線などの工事用に使用され、枕木などの小型資材の運搬や、駅用エスカレータートラスなどの重量物搬送、レール運搬車の牽引などに用いられました。日中は尼崎車庫の21番線に留置され、運搬作業は夜間に行われていました。

201号、202号とも1両単独での走行が可能ですが、故障に備えて常に2両で運用されました。通常は全室運転台側が先頭に出るように組成されますが、作業内容によってはボックス型側が先頭に出ることもありました。

1990年には、部品共通化のため台車と主電動機が換装されました。台車は平行カルダン方式のFS-341（付随車用のFS-341Tを電装化）に、主電動機は東洋電機製造製のTDK-818-A（1時間定格出力60kW）に変更されました。同時に、塗色もエンジ色からジェットカーと同じウルトラマリンブルーに変更されています。

2017年4月1日時点では、2両とも在籍していました。2024年9月には近日中の引退が発表され、同年10月8日には引退記念の見学会が行われました。

110形

110形は、小型車1141形1145号から改造された旧性能救援車153号の代替として、1987年に武庫川車両工業で製造された救援車です。153号が自走可能な電動車であったのに対し、110形は自車に動力を持たない制御貨車として製造されました。

なお、110という車号は、初代の有蓋電動貨車から数えて4代目にあたります。

車体

車体長は17.7m、車体幅は2.74mで、両運転台の切妻車体です。前面中央部に貫通扉が設けられ、側面には片側2カ所に幅2.0mの機材搬出入用引戸と、固定窓が2箇所設けられました。車内には155形と同様に荷物棚が設置され、救援資材が積載されました。また、車内にはホイストが取り付けられています。屋根にはグローブ型ベンチレーターが2つ搭載されています。

塗装は新造時よりジェットカーのウルトラマリンブルーがベースで、妻面には赤胴車のバーミリオンの帯が配されました。

主要機器

台車は直角カルダン方式のFS-206を電装解除したFS-206Tでしたが、後にFS341台車に換装されました。ブレーキ装置は営業車との併結を考慮してHSC電磁直通ブレーキが採用され、連結器はバンドン式密着連結器です。

運用

110号は尼崎車庫に常駐し、緊急時以外は車庫の22番線に留置されていました。自車に動力を持たないため、出動時は電動車と連結して現場に向かいます。併結する車両はHSCブレーキの在来車に限定され、末期には7861・7961形のみとなっていました。

検査出場時等の試運転で日中の西大阪線（現・阪神なんば線）を走ることもありましたが、阪神なんば線の開業後は営業列車の増発で試運転列車の設定が困難となり、以後は尼崎車庫内の構内試運転に変更されました。

2017年12月1日付で廃車となり、解体されました。

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