阪神5001形電車 (初代)

阪神5001形電車

阪神5001形電車は、阪神電気鉄道が1958年に製造した通勤形電車です。各駅停車用の高加減速車両、通称「ジェットカー」の先行試作車として、様々な試験運用を行い、その後のジェットカー設計の基礎を築き上げました。

開発の経緯

当時の阪神本線は、大阪 - 神戸間で阪急神戸線、東海道本線（JR神戸線）と競合しており、駅数が他社線よりも多いことが運行速度のハンデとなっていました。そこで阪神は、高頻度運転を維持しつつ、駅間距離の短さを克服するために、加減速性能に優れた新型車両の開発を目指しました。

戦前期の阪神においては急行系車両と普通系車両の2本立てで運行していましたが、戦後の車両大型化・高性能化に際して、急行用には「赤胴車」を投入した一方、普通系車両の置き換えには、高加減速性能を持つ全く新しい車両が求められました。これが5001形開発の背景にあります。

新型車両には、平均駅間距離約1kmの区間を約1分で走行し、阪神間を各駅停車で45分で走破するという目標が課せられました。そのため、高加減速性能と最高速度100km/hの両立が求められ、アメリカのシカゴ・Lの最新鋭車を参考に開発が進められました。

車両概説

5001形は2両のみ製造され、5001が日本車輌製造、5002が川崎車輌で製造されました。車体は19m級の軽量鋼製で、湘南型の前面を持ち、側面には幅広の両開き扉が3箇所配置されました。外部塗色は緑色をベースにクリーム色を配したもので、「アマガエル」と呼ばれていました。

内装は、クロスシートとロングシートを組み合わせた特殊なセミクロスシート配置で、乗客の転倒防止のため、スタンションポールや握り棒が多数設置されました。

主要機器

5001形は試作車として、様々な新機軸が盛り込まれました。台車は4種類が試用され、主電動機は東芝と東洋電機製造のものがそれぞれ搭載されました。制御器はゼネラル・エレクトリック社製の電動カム軸式制御器のライセンス生産品である東芝MC-3Aを搭載しました。ブレーキ装置は発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキのHSC-Dを採用しました。

運用

5001形は、起動加速度4.5km/h/s、常用減速度5.0km/h/sという、当時としては画期的な加減速性能を持っていました。試運転では起動加速度6.5km/h/sまで引き上げることも検討されましたが、最終的には上記の加減速度設定となりました。

営業運転開始後は、普通系小型車各形式に混じって運用され、その実績をもとに、翌1959年から量産型ジェットカーである5101形・5201形が製造されました。

1961年には、追突事故による破損を機に、量産化改造が実施され、前面形状の変更や塗装の変更、主要機器の換装が行われました。その後も昇圧改造や座席のロングシート化などを経て、量産ジェットカーと共通の仕様となりました。

廃車と譲渡

1975年、普通系車両の冷房化推進に伴い、5001形は老朽化のため、新造車によって代替されることとなり、1977年3月11日付で廃車されました。車両番号は、新造された2代目5001形に引き継がれました。

廃車後、車体は高松琴平電気鉄道（ことでん）に譲渡され、1050形として再生されました。京浜急行電鉄の台車や電装品などを利用し、琴平線の主力車として活躍しましたが、2003年に運用を終了し、廃車解体されました。

阪神5001形は、わずか2両の試作車でしたが、その先進的な技術と優れた性能は、後のジェットカー開発に大きな影響を与え、阪神本線の輸送力向上に大きく貢献しました。

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