阪神5550系電車

阪神5550系電車

阪神5550系電車は、阪神電気鉄道が2010年に導入した普通系車両（ジェットカー）です。5311形5313・5314の代替として、5500系をベースに1000系の技術を導入したマイナーチェンジ車として、1編成4両のみが製造されました。形式名からもわかるように、5500系の派生系列にあたります。

大手私鉄の通勤車両としては、最後に登場した普通鋼製車体という点も特徴です。

開発の経緯

当時、阪神最後の運行標識板使用車であった5311形を置き換える必要がありました。そこで、実績のある5500系をベースに、当時最新の技術を導入した1000系の要素を取り入れることで、開発コストを抑えつつ、性能向上を目指しました。形式名が5550系となったのは、この経緯を反映したものです。

しかし、製造されたのは1編成のみで、その後の旧型ジェットカーの置き換えは、5700系に移行しました。

製造

5000系は阪神の子会社である武庫川車両工業が製造を担当していましたが、同社は2002年に解散。そのため、5550系は、設計は阪神車両メンテナンスが担当し、車体制作はアルナ車両が担当、艤装は阪神車両メンテナンスが行うという体制で製造されました。車内には、それぞれの会社の銘板が設置されています。

構造

5500系・1000系との共通設計を可能な限り採用することで、設計製作期間の短縮とコスト削減が図られました。

4両固定編成で、神戸方の先頭車（5562形5562号）は制御付随車です。これは、ジェットカーとしては初の付随車となりました。ただし、この構成は運転士から違和感があるとの意見が出たため、後継の5700系では見直されています。

他形式との併結運用は考慮されていませんが、試運転などで5500系との併結ができるよう、ジャンパ連結器などが装備されています。M1車とM2車の間には、車庫構内運転用の簡易運転台が設けられています。

車体

5500系に準じた片側3扉の普通鋼製車体です。ただし、屋根板と客用扉の戸袋部下部の外板にはステンレス鋼が使用されています。塗装は5500系と同じアレグロブルーとシルキーグレイです。

客用扉の幅は、5500系の1,400mmから1,300mmに変更されています。種別・行先表示器は、5500系の字幕式からLED式に変更され、種別表示はフルカラーLED、行先表示は白色LEDです。

車内は青色を基調とし、座席はロングシートでバケットシートが採用されています。2024年の検査で、優先座席のモケットが緑色に変更されました。

登場時より車椅子スペースが設置され、開閉扉上部には扉開閉予告灯と盲導鈴が新設されました。天井周りは1000系に準じており、蛍光灯カバーは省略されています。車内案内表示装置はLEDによるフリーパターン式です。

乗務員室は5500系とほぼ同じですが、主幹制御器がデッドマン装置付きとなり、運転台パネルにモニタ装置の情報表示器が設置されています。

主要機器

主要機器は1000系と共通のものが採用されています。

主電動機は、1000系と同じ東洋電機製造TDK-6147-Aです。1基あたりの出力は、5500系の110kWから170kWに向上しています。制御方式はVVVFインバータ制御で、三菱電機製MAP-174-15V163Bが搭載されています。

最高速度は110km/h、加減速度は5500系と同じく起動加速度4.0km/h/s、減速度4.5km/h/sです。

台車は、住友金属工業製のモノリンク式ボルスタレス台車で、電動車はSS171M、制御付随車はSS171Tを装着しています。歯車比は1000系と同じ97:16 (6.06)、駆動方式はTD平行カルダン駆動方式です。

補助電源装置は、東芝製INV146-L0（150kVA）が中間電動車に搭載されています。電動空気圧縮機は、C-2000-MLが両先頭車に搭載されています。

パンタグラフはシングルアーム式のPT7160-Aで、電動車に搭載されています。車体側は、従来の下枠交差式パンタグラフの搭載にも対応した構造となっています。

編成先頭部の連結器は、廻り子式の密着連結器です。

運用

2010年12月29日より営業運転を開始し、他の普通用車両と区別なく運用されています。

もう一度検索