阪神8701・8801・8901形電車

阪神8701・8801・8901形電車は、阪神電気鉄道が1986年に導入した、優等列車用の電車です。愛称は「赤胴車」と呼ばれ、阪神本線の急行系車両として活躍しました。元々は4両編成であった3801・3901形を改造し、6両編成に組み替えた車両です。

概要

1974年に西大阪線延伸用として登場した3801・3901形は、4両編成3本が製造されました。しかし、1986年に第1編成が脱線事故により廃車。同時期に、併結していた3501形の老朽化も進みました。1984年には6両固定編成の8000系が登場しており、本線の急行用車両を6両編成に統一する方針が打ち出されていました。

そこで、残った3801・3901形の2編成を組み替え、6両編成1本としたのが8701・8801・8901形です。3903Fの大阪側3両と3905Fの神戸側3両を組み合わせ、本線急行用として改造・改番されました。余剰となった先頭車2両は、電動車化改造の上で武庫川線専用の7890・7990形として再利用されています。

改造内容

ユニット端部となる8701形の神戸側と8802形の大阪側に簡易運転台が新設されました。連結器は、従来の棒連結器からバンドン型密着連結器に変更されています。また、先頭車の8902形にあったジャンパ栓受は撤去されました。

性能面では大きな変更はなく、制御方式は従来の抵抗制御を踏襲。補機類の配置も変更されず、[電動発電機]や空気圧縮機(CP)は、元の車両から引き続き搭載されました。

神戸側先頭車の8902形は、種車が3906形であるため、大阪側先頭車の8901形(旧3903形)よりも車体長が100mm長くなっています。大阪側ユニットと神戸側ユニットの間には母線が引き通されたため、8802形の神戸側パンタグラフが撤去されました。パンタグラフ撤去跡への冷房装置増設は行われず、8802形の冷房装置搭載数は6基のままとなっています。

内装では、客室の化粧板が8000系タイプII以降と同じベージュ系のドット模様に改装されました。この改造内容は、後の7001形および7801形3次車の2000系への改造時にも応用されています。

編成構成

編成は、3両ユニットを2組組み合わせたTc-M-M'+M-M'-Tcの6両編成です。末尾奇数番号のユニットが大阪側に、偶数番号が神戸側に連結される点は8000系と同様ですが、ユニット間の向きは8000系とは異なり、背中合わせにはなっていません。

形式は、両端の制御車が8901形、中間電動車のうちパンタグラフ搭載車が8801形、パンタグラフなし車両が8701形にそれぞれ改番されました。6両編成で車両番号が8000番台であるなど、8000系との類似点から、乗務員の間では「ニセ8000」と呼ばれることもありました。

運用

神戸側ユニットが1986年8月7日に、大阪側ユニットが同年9月24日に竣功し、試運転を経て秋から営業運転を開始しました。8000系と同様の6両貫通編成であったことから、特急や快速急行など、阪神本線の最優等列車を中心に運用されました。MT比4M2Tの6両編成で、主電動機出力が130kWと強力であり、加速性能に優れていました。運転士からは、列車ダイヤの遅れを取り戻す際に重宝されたと言われています。

1989年には、補助機器の換装と集約が行われ、整備の省力化が図られました。[電動発電機]は8701形から撤去され、8901形・8902形ではCLG-346から出力110kVAのCLG-350-Mに換装されました。空気圧縮機(CP)は8901形から撤去され、8701形ではDH-25DからC-2000-L(LA)に換装されました。この他、両先頭車床下のジャンパ栓も撤去されています。

登場当初はドアカット装置を設置しておらず、三宮駅3番線降車ホーム側の大阪方先頭車部分をドアカットできない制約がありました。そのため、1991年から快速急行への充当を避けていた時期がありましたが、1998年にドアカット装置が追設されたことで、再び快速急行にも使われるようになりました。

しかし、8801形は1998年2月に運行を開始した直通特急への対応改造は実施されず、直通特急が増発された2001年3月のダイヤ改正では、朝夕ラッシュ時や甲子園行き臨時特急など、阪神本線内完結の運用が多くなりました。先頭連結器のバンドン式から廻り子式への換装工事も施工されていません。

2008年11月22日に阪神尼崎車庫から山陽東須磨車庫へ回送された後、深夜に山陽東二見車庫へ回送され、同車庫に留置されました。そして、阪神なんば線開業を目前にした2009年2月16日付で廃車。改造種車の3801・3901形は、西大阪線の難波延伸と近鉄乗り入れを見込んで製造されたものの、西大阪線を延伸した阪神なんば線へは乗り入れることなく、その生涯を終えました。

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