防衛力整備計画 (2023)

防衛力整備計画：2023年度～2028年度

2022年12月、日本の防衛力を抜本的に強化する新たな防衛力整備計画が閣議決定されました。これは、国家安全保障戦略、国家防衛戦略と並ぶ「安保三文書」の一つであり、2023年度から2028年度までの5年間、約43兆円という過去最大規模の予算が投じられる計画です。

計画の目的と概要

この計画の最大の目的は、我が国への武力攻撃を未然に防ぐ抑止力の強化と、万が一攻撃を受けた場合でも、これを阻止・排除できる防衛力の構築です。そのため、宇宙、サイバー、電磁波領域を含むあらゆる領域を統合し、柔軟かつ戦略的な活動が常時可能な「多次元統合防衛力」の構築を目指しています。

具体的には、5年後の2027年度までに、我が国への侵攻を阻止・排除できる防衛力を整備し、さらに10年後を見据え、より早期かつ遠方からの阻止・排除を目指します。

強化される防衛力

計画では、以下の6つの能力強化が重点的に挙げられています。

1. スタンド・オフ防衛能力: 敵の射程圏外から攻撃できる能力。12式地対艦誘導弾の能力向上、島嶼防衛用高速滑空弾や極超音速誘導弾の開発、トマホーク巡航ミサイルの導入などが含まれます。これらを実現するため、潜水艦発射型や輸送機搭載型の垂直ミサイル発射システム(VLS)などの開発も進められます。
2. 統合防空ミサイル防衛能力: 弾道ミサイル防衛能力の強化。ペトリオット・システムの改修、新型レーダーの導入、迎撃ミサイルの取得、イージス・システム搭載艦の整備、早期警戒機の増勢などが計画されています。また、高出力レーザーや高出力マイクロ波(HPM)等の指向性エネルギー兵器による対処能力の研究開発も進められています。
3. 無人アセット防衛能力: 無人機(UAV)、無人水上航走体(USV)、無人水中航走体(UUV)などの無人システムを活用した情報収集、警戒監視、攻撃能力の強化。様々な種類の無人機を整備し、有人機との連携強化も図ります。
4. 領域横断作戦能力: 宇宙、サイバー、電磁波領域での防衛力の強化。宇宙領域では情報収集能力強化のため衛星コンステレーション構築を推進、サイバー領域ではサイバー防衛隊の増強、電磁波領域では電子戦システムの整備などが計画されています。
5. 指揮統制・情報関連機能: 情報収集・分析能力の向上、人工知能(AI)の活用による情報収集・分析、統合的な指揮統制システムの構築など、情報戦における優位性を確保するための取り組みです。
6. 機動展開能力・国民保護: 南西諸島への迅速な部隊展開能力の向上。輸送機、輸送艦、車両、荷役機器などの取得・整備、民間船舶の活用、災害対策の強化などが含まれます。

人的基盤の強化

少子高齢化による人材確保の困難さを考慮し、自衛隊員の募集・採用、教育訓練、待遇改善など、人的基盤の強化に関する施策が総合的に推進されます。

国際協力

日米間の防衛協力の強化、自由で開かれたインド太平洋戦略に基づく多角的な防衛協力・交流の促進も、この計画の重要な柱です。日米間の相互運用性の向上、情報共有、装備・技術協力などを強化し、円滑化協定(RAA)や物品役務相互提供協定(ACSA)などの枠組み整備も推進されます。

組織改編と装備の最適化

防衛力の効率的な運用とコスト削減のため、組織改編と装備の最適化も進められます。具体的には、統合司令部の創設、新たな部隊の編成、既存部隊の改編・廃止、無人化・省人化、スクラップ・アンド・ビルドによる装備の更新などが計画されています。

まとめ

この防衛力整備計画は、日本の安全保障環境を大きく変える可能性を秘めています。多大な予算が投じられる計画であるだけに、その効果と費用対効果について、国民的な議論が求められます。計画の進捗状況と成果については、継続的な監視と評価が必要です。

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